2007年をデザインで振り返る

今日は2007年をデザインで振り返ります。

今年のデザインで一番お話したいのは、
任天堂の家庭用ゲーム機「Wii」(ウィー)です。

Wiiは、SMBCコンサルティングのヒット商品番付で
東の横綱になりました。

(参考)SMBCコンサルティング ヒット商品番付

日経MJのヒット商品番付でも横綱だったと記憶しています。


Wiiは、今年4月~9月に世界で733万台売れました。

発売は昨年の12月2日からでしたが、
9月末までの累計で1,335万台売れた大ヒット商品です。
(国内の累計は367万台)


振るだけで遊ぶことができる、わかりやすさと
難しすぎないゲーム感覚に優れた商品だと思います。


私も遊んだことがありますが、
Wiiリモコン振ると、リモコンの振動機能で振動が伝わり、
振った感触があります。

また、リアリティーを極度に追求しなかった点
(難しすぎないゲーム感覚)も良かったと思います。

老若男女を問わず幅広い人たちが、みんなで遊べます。

直感的に遊べる素晴らしいゲーム機です。


Wiiのコンセプトデザインは素晴らしいのですが、
このコンセプトを支えるコントローラや、本体、
パッケージなどのデザインも秀逸です。

みんなに受け入れられるデザインになっています。

手になじむコントローラの絶妙な大きさや、
パッケージデザインの良さ
本体の置いた姿の美しさなど・・、挙げるとキリがないです!


任天堂WiiのWebサイトでは、「社長が訊くWiiプロジェクト」
と題して開発の裏話も掲載されています。読むと面白いですよ。
http://www.nintendo.co.jp/wii/topics/index.html


Wiiは2007年度グッドデザイン金賞を受賞しました。

単なるグッドデザイン賞ではありません。
今年のグッドデザイン賞のベスト15に選ばれた金賞です。

(参考)グッドデザイン賞のWebサイト

最高の賞であるグッドデザイン大賞には、
惜しくも及びませんでしたが、
三洋電機のeneloop(エネループ)と最後まで争ったようです。

付け加えるようで恐縮ですが、eneloopの環境配慮や
技術力の高さも素晴らしかったと思います。


また今年は、東京ミッドタウンのオープンもありました。
このブログでも21_21 DESIGN SIGHTをご紹介しました。

デザインの大きな発信地になっています。
来年以降も引き続き注目したいです。


Wiiに話は戻りますが、Wiiのコンセプトや、
リモコンの握った感じ、振った感触には心を揺さぶられました。

私は、こういった方向のデザイン、ビジネスが大好きです。
来年もこんなデザインを期待しています。

さて、Wiiを絶賛したところで、今年のブログは終わりです。
来年もよろしくお願い申し上げます。それではよいお年を!

2007年をブランドで振り返る

今年も残すところわずかとなりました。
2007年をブランドで振り返ります。


2007年のブランドの話題といえば、
やはり食品表示の偽装問題でしょう。

不二家、ミートホープ、石屋製菓、赤福、船場吉兆が
特に大きくマスコミで取り上げられました。

その他の企業でも、不適切な表示の発覚が相次ぎました。
大変残念なことです。


ブランドは、商品の提供者や、商品のコンセプトなどを
顧客に伝えますが、これらの企業では、
ブランドが大きく傷ついてしまいました。

また、消費者にとても浸透していたブランドでしたので、
報道でも大きく取り上げられ、かえって負のブランド効果と
なってしまった感は否めません。


本来のブランドのあるべき姿である
「私が作りました。」「私がサービスを提供します」と
胸を張って言える姿に戻ってほしいものです。


私はブランドにはプライド(Pride)が必要だと考えています。

誇りや信念がないと、薄っぺらいコンセプトだけが先行し、
ブランドがよい形で顧客に浸透しないと考えています。


不適切な食品表示は、上記5社以外にもありましたが、
ひとつ良かった点と思うのは
従業員の内部告発で発覚したたケースが多かったことです。

もちろん、さまざまなケース・事情があったと思いますが、
会社のため、正義のために告発したケースも
少なくないと思います。

将来振り返ってみたときに、告発したことで、
ブランドが守られたというケースもあると思います。

働く人の正義、プライド、良識を感じられました。
大切にしたいですね。

来年は、よいブランドの構築・復活を期待したいです。


次回は、2007年をデザインで振り返ります。

目次(0041~0060)

今日は目次をお届けします。


2007年8月24日~2007年12月22日分

記事ナンバーとタイトル

60 目次(0041~0060)

59 ヘルシア緑茶まろやかのターゲット


 56~58は、小林製薬のブランド・デザインを書いてます。

58 小林製薬のデザイン戦略
57 小林製薬の分かりやすく、憶えやすいネーミング
56 小林製薬のマーケティング戦略に学ぼう


 黄桜の「空白の一日」CMとブランディングです。

55 小林繁さんと江川卓さんのCM


 49、53、54はトップデザイナーから学びます。

54 21_21 DESIGN SIGHT「water」
53 深澤直人さんの課外授業


 44、47、51、52は、イベント紹介と報告です。

52 東京コンテンツマーケット2007訪問レポート
51 東京デザインマーケット 2007年度訪問レポート


50 デザイン発注者の認識レベルも求められる
49 情熱大陸 佐藤卓さんが目指すデザイン


 45、46、48は、タイムリーな知財の話題です。

48 小売等役務商標制度

47 東京コンテンツマーケット2007

46 担保としてのデザイン資産価値
45 意匠権を担保とした融資

44 東京デザインマーケット 2007年年度


 41~43は、実はアクセスが多い人気記事です。

43 三越と伊勢丹のブランド
42 アニマルラバーバンド
41 グッドデザインプレゼンテーション


40 目次(0026~0040)


読み逃した記事はありませんか?

読んでブランド、デザインを学びましょう!

ヘルシア緑茶まろやかのターゲット

今日は花王の「ヘルシア緑茶まろやか」の
マーケティング戦略についてです。

花王「ヘルシア」

「ヘルシア緑茶まろやか」は
ヒット商品である「ヘルシア緑茶」を
さらに甘く、まろやかな味にした商品です。

体脂肪に効く高濃度茶カテキンは苦いのですが、
それを多く配合しても飲みやすくしたのがヘルシア緑茶です。

「まろやか」ではお茶の甘みを引き出してあるそうです。

もともとヘルシア緑茶も飲みやすいのですが、
さらに飲みやすくなったと私も思います。(私も飲みました)


ここからが本題です。

この「ヘルシア緑茶まろやか」のCMを見ると、
若い女性が飲んでいます。

登場する女性は細身です。
そして、体脂肪が多いようには見えません。

最初、このCMを見たときは、
ダイエットを考える若い女性に売りたいのかなと
私は考えました。

しかし今は、私は違うように感じています。


例えば、ダイエットしたいという若い女性に
アピールしたいなら、

コカコーラの「アクエリアス アクティブダイエット」の
ようなCMやパッケージデザインを行うでしょう。

日本コカ・コーラ社のニュースリリース
http://www.cocacola.co.jp/corporate/news/news_00153.html

アクティブダイエットは若い人が多く集まりそうな
表参道の駅などで大きくプロモーションをしていました。


しかし、ヘルシアのパッケージデザインには、
若い女性をターゲットという印象を持ちません。

「まろやか」のフォントは和風で渋い印象ですし、
CMも機能をシンプルに訴え、やや地味な印象です。

若い女性にも飲んでほしいが、それだけでなく、
年齢が少し上の婦人を一番のターゲットとしているのでは、
という気がしています。


私は、周りの若い女性がヘルシアを
飲んでいるところをあまり見ません。

緑茶やブレンド茶を飲んでいて、ダイエットしたいと
話しているのにもかかわらずです。

パッケージには「体脂肪が気になる方に」と
はっきり書いてありますし、
ヘルシアには、やはり中年男性のイメージがあるから
若い女性は、手を伸ばしにくいのでしょうか。


ここまで見ると、花王には「ダイエット=若い女性」
として売らなかった、鋭いマーケティング戦略が
初代の「ヘルシア」発売当時からあったように思えます。


花王から、ターゲットや詳細な戦略は明かされていませんし、
ここまでの話も、あくまでも私の推測に過ぎませんが、

大ヒット、ロングセラー商品へ導いたPR戦略を
今後も研究、注目すべきだと思います。


小林製薬のデザイン戦略

小林製薬のマーケティング戦略について
前回の続きです。

分かりやすさを徹底して追求していることは
前回までお話しました。

商品パッケージのデザインでも
同様に分かりやすさが追求されています。

小林製薬では、見た目の良さより、分かりやすさ、
店頭で目立たせること優先させてきたそうです。


確かに、小林製薬の製品を見ると、おしゃれというより
分かりやすさが強調されていると思います。


小林豊社長は、カンブリア宮殿や日経デザインで
デザインについて、こんなことを語っています。


パッケージデザインは、インパクトのあるものか
かっこいいもの、のどちらか割り切ることが必要で、
中途半端はいけない。

デザインが崩れてもいいから文字を大きく、
分かりやすくしてくれと注文することがある。



これを聞いて私は、

デザインではとかく、美しさが尊ばれがちだが、
分かりやすさは犠牲になっていないか

という問題を突きつけられたようにも思いました。


ただ、社長は、次のようにも話しています。

今後は若い人に買ってもらうことを考えると
デザイン性も考えていく必要がある。


私も、だんだんと造形美の追求や、
持っていても(置いていても)恥ずかしくない
といった要素は、無視できなくなると思います。


しかし、中小企業のマーケティング、デザイン戦略を
考える上で、小林製薬から学ぶことは多いと思います。

以上、3回にわたり
小林製薬のマーケティング戦略をご紹介しました。
いかがでしたか?

中小企業でもすぐに取り入れられる手法が多かったと思います。
良いものは取り入れてみましょう!

小林製薬の分かりやすく、憶えやすいネーミング

小林製薬のマーケティング戦略について、前回の続きです。

前回の繰り返しになりますが、小林製薬のマーケティングでは
次の流れを狙っているようです。

1.「あったらいいな」というニーズに応える商品を開発します。
2.CMで「こんな商品あったらどうですか?」と投げかけます。
3.そして店頭で手に取ってもらい、買ってもらいます。


2のCMでの投げかけの時にポイントとなっている
ネーミングについてご紹介します。


小林製薬では、名前を見て、すぐにどんな商品かイメージ
できるようネーミングにもかなり力を入れていました。

前回、アイデアもたくさん出すことを紹介しましたが、
ネーミングも候補をたくさん出します。
本当に多く出していました。

そして候補の中から最後は社長が決断するそうです。


例として「ブルーレットおくだけ」が取り上げれていました。

もともとは「ブルーレットポン」という案だったそうです。

「ポン」でも、ワンタッチで済みそうなイメージが持てますが、
置くだけで、トイレ掃除が楽になり、イヤな臭いもなくなる
という製品特性に社長が着目し、
「ブルーレットおくだけ」と決定したそうです。

確かに「おくだけ」というのは、分かりやすいし、
イメージできるので買いたくなりますよね。


そして、ネーミングでは憶えやすいことも重視していました。

なぜかというと、商品は消費者へ
短い15秒のテレビCMで訴求し、知ってもらいます。

短いCMであっても、消費者が店頭に行ったときに
「そうそう、これテレビで見たやつだわ」
と思い出してもらえるよう、
分かりやすさ、憶えやすさを大切にしているのです。


サワデーは「さわやかサワデー」として憶えていますし、
「アンメルツヨコヨコ」も肩などへの塗りやすさが、
訴求できるネーミングです。

「熱さまシート」も店頭で皆さんCMを
思い出したのではないでしょうか。


前回と今回をまとめると、

商品コンセプトを絞り込んで、明確にしたうえで、
短いテレビCMで分かりやすく訴求します。

ネーミングは憶えやすい、感覚的に理解しやすいものを選び、
店頭で思い出してもらうのです。


それを行うため、アイデアはたくさん出したほうが良い、
分かりやすい、憶えやすいネーミングが良い、

なんて書くと、それは当たり前だと言われるかもしれません。

しかし、それに徹しているのは、素晴らしいことです。
アイデアを全社員の力を使って徹底的に集めます。
この徹底力がすごいのです。
まさに「言うは易し、行うは難し」です。


当たり前のことを行える企業づくり、仕組みづくりは、
とても難しいことだと、中小企業診断士として痛感します。


次回は小林製薬の店頭で手にとってもらえる
デザイン戦略についてです。