客単価と客数増を目指すマクドナルドの新世代デザイン店舗(4)

おはようございます。中小企業診断士の山口達也です。
マクドナルドの新世代デザイン店舗視察レポートの続きです。

渋谷新南口店4.jpg

新世代デザイン店舗の最大の特徴は
クルー配置が多いことだと私は考えています。

2店とも、いわゆるホールにクルーがいて、
客の席案内をしたり、まめにテーブルを拭いたりしています。

食べた後のゴミ片づけは、原則セルフサービスですが、
クルーが気を利かせて、
ほどんどの客に声をかけて、客の代わりにやってくれます。

クルーが客のよく動向を見ているのです。

このクルー、アルバイトが多いと思いますが、
本当に立派な接客です。教育が素晴らしいですね。

クルーが他のクルーにアドバイスしている場面も数回見ましたが、
客にとって気になるようなやり方ではないので、
注意深く観察していないと、その場面には気付かないでしょう。

サービス面は本当に充実しています。

もちろん従来店舗にもこのようなサービスがないわけではありません。

ただ、新世代デザイン店舗では、
クルーの配置数やきめ細かさが段違いに充実しているのです。

しかし、経営視点に立つとクルーの人数が多すぎるようにも見えます。
コスト増が懸念されます。

今は試行錯誤の段階であることは間違いありません。
適正配置に変わっていくと予測します。

クルー配置以外にも、これから改善する箇所はあるでしょう。

原田社長も新世代デザイン店舗で
「実験」「テスト」をしている段階と話しています。

ここからは私が考えるマクドナルドにおける
新世代デザイン店舗の位置づけの話になります。

新世代デザイン店舗のコンセプトが、
現在のようなクルーの手厚いサービスがあることだとすると、

価格や内装が異なるので識別しやすいとはいえ、
その手厚いサービスに慣れた客は、従来のマクドナルドでは、

「数十円安いけれどもサービスが足りない」

と感じる危険性が高くなります。

これはマクドナルドブランドの危機です。

同一ブランドで、従来店舗と新世代デザイン店舗それぞれの
異なるサービス提供の併存は好ましくないでしょう。

併存が好ましくないことは
マクドナルドもおそらく分かっているでしょう。

これらを総合して考えると、

マクドナルドは将来、従来の店舗を残さない
(つまり併存させない)前提で、
新世代デザイン店舗開発を考えていると思うのです。

子どもや若年層に喜ばれる立地や一部の地域を除いて、
従来店舗は、すべて新世代タイプに変えるつもりだろう
と私は推測しています。

原田社長は、これまで徹底して客数増を進めてから、
客単価増を図ってきました。

新世代デザイン店舗は、
今までのマクドナルドに入りにくかった層からの支持を獲得し、
客単価の向上も目指しています。

今後、注目したいのは次の3点です。

1.新世代デザイン店舗のクルーの配置は今後どうなるか

2.既存顧客が価格上昇を受け入れるか

3.クルーの手厚いサービスをきっかけに
マクドナルドファンになった人が従来店舗に行って、
ブランドへの失望を招かないか

中小企業経営者の皆様、マクドナルドからは
ブランドやデザインの実務だけでなく、
多くの経営のヒントも得られると思います。

<追記>
以上のように全4回分を5月8日に執筆したのですが、
その後も視察を続けたところ、実はすでに変化が始まっています。

当レポートには多くの反響もいただきましたので、
すでに起きている変化について続編レポートを後日お届けします。

客単価と客数増を目指すマクドナルドの新世代デザイン店舗(3)

おはようございます。中小企業診断士の山口達也です。
マクドナルドの新世代デザイン店舗視察レポートの続きです。

前回までの記事リンクはこちらです。

客単価と客数増を目指すマクドナルドの新世代デザイン店舗(1)
客単価と客数増を目指すマクドナルドの新世代デザイン店舗(2)

渋谷新南口店3.jpg
渋谷新南口店2.jpg

渋谷新南口店はビジネスパーソンが多い店です。

内装は大人向けにおしゃれになった感じですね。
シックだけど少し“ゆるさ”を残している印象を受けます。

クルー(マクドナルドの店員)の制服も異なっていることにも
気付きましたでしょうか。

改装前に行ったわけではないので、客数比較は難しいですが、
ランチ時の混雑としては一般的な状況でした。

満席のため、オーダーをあきらめる客も見かけました。

ただし、マクドナルド以外の店と比べて
際立って混雑しているという印象はありませんでした。

平日昼間セットからは150円くらい値上がりしていますが、
持ち帰り客もそれなりにいます。

ただ、客席にコンセントはありません。

従来型店舗の中には、コンセントを自由に使える店があります。

私のようにパソコンを持ち歩いているビジネスパーソンには
重宝しているのですが、渋谷新南口店にはなく残念です。

また、各テーブルの上にメニューが置いてあるのですが、
これが2人で両側で座って利用する時に邪魔になります。

マクドナルドメニュー.jpg

商品価格を改めましたし、商品を知らせる効果としては
良いと思いますが、邪魔になっていますので
オープンから日が経つにつれ、無くしていくのだろうと推測します。

渋谷店も覗いてみました。
かわいらしい店舗デザインで女性や子供に人気がありそうです。
こちらの来店数も多かったです。

次回は本シリーズ最終回です。
経営戦略上における新世代デザイン店舗の位置づけを考えます。

目次(0201~0220)

おはようございます。中小企業診断士の山口達也です。
マクドナルドの新型店レポートの続きは明後日お伝えします。

今日は目次をお届けします。
ご興味をもった記事がありましたらご覧ください。

2010年1月4日~2010年5月23日分

記事ナンバーとタイトル

220 目次(0201~0220)

マクドナルドの新型店レポートは全4回を予定しています。
前半の2回分です。

219 客単価と客数増を目指すマクドナルドの新世代デザイン店舗(2)
218 客単価と客数増を目指すマクドナルドの新世代デザイン店舗(1)

217 映画「アバター」にみる強いブランドの要素

214、216はデザインプロセスを学べる内容です。

216 「デザイナー活用ガイド」から「デザイン活用ガイド」へ改訂
215 「デザイン取引慣行の調査報告」を発表します
214 知る楽:仕事学のすすめ「人を動かすデザイン力」

213 地道な活動がつくりあげた厚木シロコロ・ホルモン
212 ツイッターのドメイン取っていますか?
211 中小企業診断士の広場からリンクされました

203、209、210は私のセミナー情報です。

210 満員御礼!「ちば戦略的デザイン活用塾」
209 セミナー「売れる商品企画とデザイン思考」をやります

208 ロゴをあえて崩すGoogleのDoodle
207 マーケティング力を感じる「午前十時の映画祭」
206 iPad とブランドネームの注意点
205 かわさき産業デザインコンペ2009
204 ユーキャンTVCFの変化が映し出す不安心理

203 セミナー「集客UPの販促計画・販促デザイン実践技法」をやります!

202 横浜型地域貢献企業認定制度とCSR
201 21_21DESIGNSIGHT 「THE OUTLINE 見えていない輪郭」

200 目次(0181~0200)

今後ともよろしくお願いします。

客単価と客数増を目指すマクドナルドの新世代デザイン店舗(2)

おはようございます。中小企業診断士の山口達也です。
マクドナルドの新世代デザイン店舗視察レポートの続きです。

私は平日の12時~13時半に、
渋谷センター街店と渋谷新南口店に行きました。

この2つの店舗はデザインが異なります。
客層の違いに対応しているようです。

デザインは全部で5タイプで、
すべてフランス人のデザイナーによるものだそうです。

まずは13時前後の渋谷センター街店から報告です。

渋谷センター街店は繁華街の真っただ中で、
平日ランチ時でもビジネスパーソンより若者が多い店です。

渋谷センター街店.jpg

照明、ディスプレイは喫茶店に近い感じです。
席やテーブルは従来より少しゆったりしています。

「予約席」のプレートを見かけたり、
映像を映し出すディスプレイなど、初めてみる物もあります。

写真の左端に黄色いディスプレイが映っています。
立地特性からすると、
平日夕方や休日に混雑のピークが来るのでしょう。

その点を考慮すれば、席に余裕があるのも
通常通りなのかもしれません。

注文の仕方は従来店舗と同じです。
メニュー表のデザインは大きく異なります。

写真なしの小さい文字で構成されており、
若者向けに洗練された感じのメニュー表です。

商品は今までとまったく変わりませんが、
トレイの色は薄いエメラルドグリーンです。
(トレイの色を変えた意図はわかりませんが・・)

トレイに敷いてある紙もデザインが異なります。

マクドナルド新トレイ.jpg

新世代デザイン店舗には100円マックや平日昼間ランチセットは
ありません。商品単価そのものも数十円高くなっています。

したがって客単価は上がっているでしょう。

周辺は競合する飲食店が多く、客層や価格の変化を考えると、
休日に若者(特に学生)がどれくらい支持するか注目ですね。

次回のブログは220本目の記事で目次です。
その次に渋谷新南口店のレポートをします。

客単価と客数増を目指すマクドナルドの新世代デザイン店舗(1)

おはようございます。中小企業診断士の山口達也です。

知人の中小企業診断士からブログ更新をツイッターに
反映させられると聞き、先月より始めています。

ただ、私のブログではアクセス数にはあまり影響がないようです。

さて、今日はマクドナルドの新世代デザイン店舗の話題です。

今年2月9日の決算発表において、マクドナルドの原田社長は、
新型店舗をオープンさせることを発表しました。

そのデザインについて以下のように述べています。

「ブランド資産をさらに構築していくための新しいデザイン」


「お客様に今まで以上の素晴らしい店舗体験をしていただくための新しいデザイン」

この外部環境下で、既存店売上6年連続プラス、
全店売上高6年連続増収、4年連続増益という結果を出した
原田社長の経営手腕を私は素晴らしいと思っています。

従業員満足度も向上しているようです。

ですから今回の新世代デザイン店舗に私は注目しています。

その新型店舗が、4月25日に渋谷区と港区の12店舗で
リニューアルの形でオープンしました。

マクドナルドのwebサイト(新世代デザイン店舗)
http://www.mcdonalds.co.jp/urban/index.html

私は渋谷の2店舗を2週にわたって視察しました(のべ4店舗)。

渋谷新南口店の写真です。
新世代デザイン店舗.jpg

渋谷の他のマクドナルドも見たことも含めて、
全4回にわたって体感レポートをお届けします。

まず、日経トレンディネットの記事をご覧いただくと、
新世代デザイン店舗の概要が分かりやすいと思います。

日経トレンディネット:100円メニューなし、最大50円値上げ…
マクドナルド“新世代デザイン店舗”の勝算は?

http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/column/20100426/1031614/

2週にわたって視察して、私が一番強く感じたのは、

マクドナルドは今後ほとんどの店舗を新世代デザイン店舗へ変えたいと考えているのではないか

ということです。

商品を変えずに客単価と客数を両方上げる
取組みとしてのデザインについて、次回からレポートします。

映画「アバター」にみる強いブランドの要素

おはようございます。中小企業診断士の山口達也です。
快適な陽気の連休ですね。
私も昨日は温水プールで泳ぎました。気持ち良かったです!

さて、連休中に映画鑑賞される方も多いと思いますが、
今日はジェームズ・キャメロン監督の映画「アバター」の話題です。

昨年末に公開された「アバター」ですが、
世界興行収入で、監督自身の作品「タイタニック」を抜いて
歴代1位になったニュースをご存じの方も多いでしょう。

人間の欲深さ、自然や平和をテーマにした映画です。

映画館もたいへん混雑していて行きにくく、
私のスケジュールの都合もあって4月の平日午後に観たのですが、
それでも満席でした。

「アバター」の大ヒットとなった要因には、
やはり3D(立体)映画であったことが挙げられるでしょう。

CGやその立体感は、今までの映画にない映像でした。
素晴らしかったです。

「アバター」の大ヒットをブランド理論から見ると、
以下の点を指摘することができます。

1.以前の(赤と青のメガネの)3D方式とは別の新しい3D方式
であり、ほとんどの人が初めて観る映像だった。
つまり、顧客が認識する新3D方式の第1号が「アバター」だった。


第1号は強力なブランド形成要因となります。
1番乗りの力はとても大きいです。

2.監督が作品の構想はあったものの、
最新の3D技術を使うまで撮影せず公開しなかった。


こだわりはブランド形成要因になります。作品の魅力を
どういう形で伝えるか、考えた末の「待ち」の期間でしょう。

最新技術を使って時間を費やして撮影した「アバター」は、
他の3D作品とは臨場感や完成度が違うという評価が見られます。

ダメなもの、中途半端なものを出さないことは、
ブランドでもとても重要なことです。

3.DVDではなく映画館に行かないと3D映像が見られない
という「限定価値」が働いた。


映画を映画館ではなくDVDで見る人も少なくない中、
映画館に行って初めて得られる3D体験の価値に顧客が反応した
のでしょう。

4月23日から発売されているアバターのDVDは3Dではありません。
(ただ、将来は3D版も出るようです。)

ブランドも他の企業・商品では得られないものを目指します。
他でもあるものは強いブランドにならないのです。

監督が狙ったかどうかはわかりませんが、

競争相手や代替品にはできないことを提供することは
有効な経営戦略です。

少なくともアバターが、DVD派の映画ファンを取り込んだことは
間違いありませんし、映画という娯楽・芸術の良さを
最大限表現している作品だと思います。お見事です。

3Dの上映方式にもさまざまあるようで、
アバターを見に行く際には以下のブログ記事を参考にしました。
ありがとうございました!

akoustam さんのブログ
It's a ... 『アバター』3D全方式完全制覇レビュー
http://itsa.blog.so-net.ne.jp/2010-01-15

この記事で109シネマズ川崎は混んでいたのかもしれません。