日本企業におけるデザイン経営の取組み状況2020年度

おはようございます。中小企業診断士の山口達也です。
今日のテーマは日本デザイン振興会が昨年度実施した
企業経営へのデザイン活用度調査の結果についてです。

日本デザイン振興会「企業経営へのデザイン活用度調査結果発表」
https://www.jidp.or.jp/2020/11/25/DesignManagementReport

日本デザイン振興会プレスリリース2020年11月25日
企業経営へのデザイン活用度調査結果発表
https://www.jidp.or.jp/media/d6d36c03-efd7-42fc-a501-f70d4d783082

下の見出しが躍っています。

jdp_designmanagement2020.jpg
「デザイン経営」に積極的な企業ほど高い売上成長を実現し、
従業員からも顧客からも愛される可能性を示唆

調査結果トピックスサマリー
相関関係として、デザイン経営に積極的な企業ほど
●売上成長率は高い傾向にある。特にエンドユーザー向け企業、デジタルに積極的な企業は顕著
●デザインへの投資は増加し、将来的な効果への期待が高い傾向にある
●従業員からも顧客からも愛される傾向にある

調査結果報告は下のURLから読めます。
https://www.jidp.or.jp/media/f10d6c71-6e09-40e1-ba47-2573fbe657d3

調査結果の概要は上の見出しの通りですが、
調査結果を読み解くうえで留意したいことをいくつかコメントします。

まず調査対象は、
グッドデザイン賞に応募したことのある企業に限られています。

デザインにある程度注力している企業ですので、
・デザイン経営に対して前向きなコメントがでやすい
・グッドデザイン賞に応募できるほど、
デザインが具現化した(ひとつの成果となった)
成功体験があることは念頭に置いて読んだ方が良いです。

次に、相関関係を示しており、
因果関係を示しているわけではないことです。

デザイン経営の取り組み度合いと
売上成長には相関性が見られますが、
デザイン経営に積極的に取り組むと
売上成長しやすいとは必ずしも言えません。

売上成長している企業ほど、デザイン経営に
積極的に取り組む傾向にあるのかもしれませんし、
組織文化が好ましい企業ほど、
売上成長とデザイン経営への取り組みを
積極化させているかもしれません。

きちんと調査報告を読めば、
上のようなことが読み取れますが
見出しだけで判断すると誤解する人も出てきそうです。
(老後2000万円問題も同様です)

ただ、私は調査報告を否定するつもりはありません。

むしろ、デザインの成果を証明することが簡単ではない中で
意欲的にこのような調査に取り組んでくださったことに
感謝しています。貴重なデータです。

私はデザインに注力して業績を上げる中小企業を
たくさん知っていますので、
見出しの内容も納得もできますが、中小企業診断士として、
情報を正確に読んでほしいと思いコメントしました。

12月18日に追加公表された
個別の設問別の結果も役立つ情報が詰まっています。
https://www.jidp.or.jp/media/a1a62fe8-ef18-4eea-8f69-2d702a7db698

グッドデザイン賞応募経験企業が対象の調査ですが、
以下のようなデータが目に留まりました。

「デザイン系職種」人材がいない企業が32.1%。

「組織もチームもないが、
プロジェクトごとに外部のデザイナーや
デザイン会社と連携している/したことがある」が33.6%。

デザインを専門とする組織や
外部のデザイナー等が担っている役割として、
「個別事業/製品/サービスのビジネスモデル全体の設計」が11.1%、
「全社的な経営計画・経営戦略策定」が10.6%。

デザイン系職種に対して経営や事業開発を理解して
もらうための取組や教育・研修を
「積極的に推進」5.1%、「推進している」14.0%、「検討中」15.0%。

「デザインへの投資」は過去と比べて
「増加している」22.6%、「やや増加している」35.6%。

これまで「デザイン系職種」として現場業務に従事
していた人材が、経営陣に参画した例は
「ある」15.0%、「ない」72.0%。

デザイン経営推進上の課題は
「費用対効果の説明が困難」45.8%、
「新商品・サービスデザインをリードできるデザイナーの不足」43.8%

デザイナーが経営全般に関わっている企業は
かなり少なく、社内にデザイナーはおらず、
社外デザイナーと連携する企業も多いことが伺えます。

中小企業は外部のデザイナーと連携するところから
始めるのがやはりよいでしょう。