2022年をブランドで振り返る パーパス経営で大切なこと

おはようございます。中小企業診断士の山口達也です。
2022年をブランドで振り返ります。

今年はパーパス(purpose)が流行りました。

パーパスとは目的、存在意義を意味します。

パーパス経営は、「自社は何のために存在するのか」
「企業の存在価値は何か」を考え、
そのパーパスを掲げることで、
社員やお客様などに企業活動に
理解、共感を深めてもらう経営です。

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2019年、2020年のハーバードビジネスレビューです。

2019年あたりから雑誌で特集され、
徐々に注目されるようになりました。

パーパスブランディングは7月にも当ブログで取り上げています。

2022年07月01日:日経デザイン2022年6月号「パーパスブランディング最前線」
https://brand-design.seesaa.net/article/489365247.html

注目される背景には、3点あると考えています。

一つ目は、従業員だけでなく
取引先や顧客の共感を得たい思いが強まったことです。

従来の経営理念やミッションは、
主に従業員に向けたものが多かったです。

それに対し、パーパスは取引先や顧客にも、
伝え、共感されたいという思いが感じられます。

クローズな研究開発、商品開発から
オープンイノベーションの促進をするため、
多様な共同研究者・取引先の
共感を集めたい考えがあります。

また、SDGsやエシカル消費、フェアトレードを
重視する顧客が増え、
価値や目指すべき世界観を掲げて、
顧客・消費者の共感を得たい考えもあります。

二つ目は、M&Aで企業グループの事業が増えたり、
切り離されたりするなかで、
企業グループの求心力が求められていることにあります。

M&Aは従業員の企業グループへの帰属意識を
低くする要因になっています。

経営者は問題意識を持っているのでしょう。

三つ目は、新型コロナウイルスによる在宅勤務、
テレワークによって、やはり企業への帰属意識が
薄くなりかねないことへの問題意識でしょう。

来年以降もパーパスを掲げる企業は増え続けるでしょう。

私は経営理念、ミッション、ブランドビジョン、
などとは別に新たにパーパスを作る必要はないと考えています。

大切なことは、
社長が考える「何のための企業か」という思いを、
従業員や顧客、取引先、株主などに伝えて
共感を得られるよう経営に励むことです。

その思いをパーパス、経営理念、ミッション、
ブランドビジョンなど、どのように呼んでも構いません。

すでに経営理念として明文化されているなら、
そのままでよいのです。

ただ、従業員や顧客、取引先、株主が共感して
仲間になってくれる内容なのか、
社長はその思いを本気で考えているか、
その思いで日々、経営判断して行動しているか、
を振り返って、
改める必要や、新しく作る必要があれば作ればよいと思います。

美しい言葉づくりが目的ではありません。

社長の心の底からの想いが反映された経営理念でないと、
日々の行動や態度に現れにくく、効果が薄いと
私はブランドづくりの仕事をしていて感じています。

新年にあたって「自らの会社は何のためにあるのか」
改めて考える機会にしても良いでしょう。

改める必要があると思うなら、新年にさっそく取り組みましょう。

今年のブログ更新はこれでおしまいです。
ありがとうございました。
皆様、良い年をお迎えくださいませ。

2022年をデザインで振り返る

おはようございます。中小企業診断士の山口達也です。
2022年をデザインで振り返ります。

今年は物価が大きく上昇しました。
長く日本では物価が上がりませんでしたが、
消費者物価指数、企業物価指数は40年ぶりの上昇率となりました。
円安、エネルギー価格の上昇が大きく影響しました。

デザインにおいてもパッケージ、包装資材の見直しが進みました。

日本経済新聞「ダイキン、製品梱包ミリ単位で見直し 輸送コスト上昇で」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF1596J0V11C22A1000000

ダイキンは製品の梱包をミリ単位で見直して、
コンテナに積載できる製品の量を増やすそうです。

発泡スチロールや段ボールのサイズを自動計算で縮小するシステムを開発したそうです。

アサヒスーパードライも6缶パックの紙の使用量を減らす
新しいパッケージを出しています。
https://www.asahibeer.co.jp/news/2022/0524_1.html

また、環境配慮のため、パッケージ素材を
プラスチックから紙に変更する流れも続いています。

ソニーのオリジナルブレンドマテリアル
https://www.sony.com/ja/SonyInfo/csr/eco/technology/original-blended-material

DNP 今注目を集める紙包材の最前線とは?グローバルでの最新事例・紙包材の特徴を解説!
https://www.dnp.co.jp/biz/column/detail/10162822_2781.html

DNPの記事によれば、米国大手飲料メーカーでは、
炭酸飲料ボトルの紙化に挑戦しているようです。

原油価格、包装資材価格の上昇と
脱プラスチックの流れから、木、紙に
素材を変更する流れは続きそうです。

販売価格を上げたくないため、
内容量を減らす実質値上げも多くなりました。

客をだますようなデザインは好きではありませんが、
以下のような記事も目をひきました。

Fashionsnap.com パッケージデザインに与えるインフレの影響
https://www.fashionsnap.com/article/2022-04-30/package-design

GOOD DESIGN EXHIBITION 2022(5)

おはようございます。中小企業診断士の山口達也です。
GOOD DESIGN EXHIBITION 2022のレポート最終回です。

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グッドデザイン・ベスト100の中から
私が注目したデザインをご紹介しています。

株式会社abaの排泄ケアシステム「Helppad」です。
https://helppad.jp

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「Helppad」(ヘルプパッド)は、
においセンサーで尿と便を検知するパッドです。

ベッドに敷くだけで排泄を検知できます。
介護での「おむつを開けずに中が見たい」ニーズに応えます。

どの程度のにおいで感知できるのか関心があります。

おむつでも濡れると知らせる機能はありますし、
これからも進化すると思いますが、
介護の負担が減るデザインは喜ばしいです。

今日のふたつめは、株式会社NITTO CERAの
シャワーシステム「SHIN-ON」です。

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さすまたのような形をしたシャワーヘッドで
360度とまではいきませんが、四方八方から
体を包み込みようにお湯が出て温まれるシャワーです。
既存のシャワーヘッドと併用して使い分ける感じです。

浴槽に入らずに温まれるのはいいですね。
洗車マシーンに人間が入っているみたいです。

次にご紹介するのはセイコーのメトロノームウオッチです。
https://www.sii.co.jp/music/mw/index.html

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音楽家や学生に向けた時計です。

時計モードとメトロノームモード、基準音モードの
3つがあって、モードを切り替えられます。

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時計モードで、短針だけで時刻を表示することに
驚きましたが、
「身につけるだけでも音楽を感じられるような腕時計」
というコンセプトで、コンパクトに美しまとめた
デザインは面白く評価したいです。

最後に紹介するデザインはデジタル庁です。

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新型コロナウイルス接種証明書アプリを例に
サービスデザインの取組が受賞しています。

デジタル庁では、サービスデザインの必要性を
組織で認識し、サービスデザインチームを立ち上げ、
民間企業からデザイン専門人材を積極的に採用して
プロジェクトを推進しました。

サービスデザインチームは、
デジタル庁において部門やプロジェクトを横断して
課題解決を取り組むチームです。

デジタル庁のサービスデザインの取り組みは
下のリンクを参考にしてください。
https://www.iais.or.jp/articles/articlesa/20220610/202206_01

利用者視点でさまざまなシステムが
使いやすくなっていくことを期待します。

今年のグッドデザイン・ベスト100のご紹介は今日が最終回です。
また来年も素晴らしいデザインを見るのが楽しみです。

GOOD DESIGN EXHIBITION 2022(4)

おはようございます。中小企業診断士の山口達也です。
GOOD DESIGN EXHIBITION 2022のレポート第4回です。

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今週はグッドデザイン・ベスト100の中から
プロダクトデザイン、構造の良さで着目したデザインを紹介します。

ソニーのワイヤレスイヤホン「LinkBuds」です。
https://www.sony.jp/headphone/products/LinkBuds

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中心に穴が開いたリング型のイヤホンで、
イヤホンを装着していても周囲の音が聞こえます。

周囲の音も聞きたいときには、以前から
骨伝導イヤホンがありますが、
「LinkBuds」はとても小さく、音質にも注力したようです。

ユーザーが会話を始めると音楽を自動停止するなど、
細かい機能も盛り込まれています。

次はスガツネ工業株式会社の丁番「HES1F-140型」です。
https://search.sugatsune.co.jp/product/g/gHES1F-140

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ドア枠が薄い、開き戸に対応したちょうつがいです。
構造を見直し、薄いドア枠でも丁番が目立たない
デザインにまとめたことと、
丁番の隙間が小さいので、子どもが指を挟みにくくなっています。

キッズデザイン賞奨励賞も受賞しています。

丁番2つで40kgの重いドアを吊れる強度の強さと
耐久性の高さも素晴らしいです。

次はタカラトミーの「SORA-Q」です。
https://www.takaratomy.co.jp/products/sora-q

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JAXA、タカラトミー、ソニーグループ、
同志社大学の共同開発によって生まれた、
変形型の月面ロボットです。

月面に着地するときは、損傷の少ない球形状で
着陸すると変形して、「バタフライ走行」と
「クロール走行」の2種類の走行モードで走行します。

小型で軽量なだけでなく、
変形や生き物の動きを取り入れたロボットの機構は
おもちゃづくりのノウハウが生かされています。

月面探査でおもちゃの技術が生かされるかもしれません。

オープンイノベーションという言葉を
よく聞くようになりましたが、異なる業界の知見も
取り入れるとイノベーションが起こせますね。

本日、最後にご紹介するのは
タイガー魔法瓶の「TIGER MTA」です。

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冷たい炭酸飲料を入れられる魔法瓶です。

炭酸ガス抜き機構と安全弁を備えた
独自の「バブルロジック」によって実現させました。

キャップを閉めている時は炭酸ガスを閉じ込めていますが、
キャップ開栓時には炭酸ガスを先に抜く機構で
噴き出しや飛び散りを防ぎ、軽い力で開けられるようにしてます。

また、ボトル内の圧力が異常に高まったときには
安全弁が作動して自動でボトル内の
炭酸ガスを逃がすそうです。

これで車中などの高温に見舞われても壊れにくくなっています。

炭酸飲料が好きな方も
ペットボトルの使用料を減らせますし、
好きな量だけを飲むことも簡単になります。

グッドデザイン・ベスト100のご紹介はまだ続きます。

GOOD DESIGN EXHIBITION 2022(3)

おはようございます。中小企業診断士の山口達也です。
GOOD DESIGN EXHIBITION 2022のレポート第3回です。

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今週はグッドデザイン・ベスト100の中から
仕組みの良さが光るデザインを紹介します。

まず、グッドデザイン金賞を受賞した「ファストドクター」です。
https://fastdoctor.jp

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新型コロナウイルスによる医療ひっ迫のニュースで
ご覧になった方も多いでしょう。

夜間、休日の時間帯では体調に不安があっても
かかりつけ医は休みのことが多く、
困ると救急しか手段がないことが多いです。

一方で、救急車を呼ぶほどではなく、
往診で対応可能な場合や軽症な場合もあります。

救急が必要かどうかの判断は難しく、
わからないからすべてを救急が担うと、
全体としては医療や救急資源を
過剰に使い過ぎているように思います。

同社は救急受診を支援しています。

症状の緊急度判定を行い、
必要に応じて救急搬送や、
往診、オンライン診療などにつなげます。

医療行為は提携する医療機関所属の医師・看護師によって行われます。

夜間・休日の時間帯の地域医療の負担軽減につながっています。
IT活用やUIデザインに注力しています。

住所登録から保険証の提出、会計までオンラインで完結し、
体調不良時に負担の少ない手続きにデザインしているそうです。

新型コロナによる医療ひっ迫で受け入れ先がなく、
往診で頼りにされたケースがとても多く、注目を集めました。

行政や医療機関が、これからも患者のため、
医療資源の利用の効率化のため、
ファストドクターというプラットフォームを
活用されると良いと思います。

次に、こちらもグッドデザイン金賞を受賞した
デュアルスクール」です。
https://dualschool.jp/about

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株式会社あわえと徳島県が受賞しています。

デュアルスクールは、地方と都市、
双方の教育委員会の間の合意があれば、
転校手続を簡略化して、二つの学校を行き来する子どもに、
スムーズに教育活動を展開します。

デュアルスクール生には、教科書の違いや、
学習進度の差を埋めるための補助教員を配置するなど、
スムーズな期間転校を支援しています。

地方と都市をそれぞれ知ることは
子どもにとって魅力だと思います。

徳島県と教育委員会とともに実証実験を進め、
住民票や授業日数の課題をクリアしたことは素晴らしいです。

次にご紹介するのは
ファシル株式会社の「シェアする防災セット」です。
https://facil.jp/shareset

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「自助+共助」の考えで、
トラックドライバーの備えだけではなく、
周囲の困っている人々と分け合う防災セットです。

災害が起こって「届ける」のではなく、
その地を走っているトラックが供給できれば、
大渋滞や豪雪・地震などで立ち往生したときに有効ですね。

使い捨て携帯トイレ、アルミポンチョ、N95マスク、
カイロ、氷砂糖、災害時お役立ちカードなどが30人分、
段ボール一箱にまとめて入っています。

防災用品搭載車マークのステッカーを車に貼って、
物流業界の災害対策と社会貢献を
社会に発信できる仕組みも良いです。

本日、最後にご紹介するのは守口市立図書館です。

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1993年に竣工した守口市生涯学習情報センターの改修です。

図書室、ホール、プラネタリウム、会議室、展示室などの
複合文化施設を図書館を軸にリニューアルしました。

建物の構造は問題がなくても、
30年経過して変化した住民のニーズに合わせて
改修することは素晴らしいことです。

バブル期の公共建築特有の多彩な機能とクセの強い空間を、
貴重な空間資源と捉えて最大限に活用した
リノベーションしたことが評価されました。

もともとあったものを上手く活かして、
コストを抑えてデザインすることは
デザイナー、建築家の力量が問われます。

パネルや動画を拝見して、
今を生きる人に喜ばれるデザインに上手く発展させたと感心しました。

グッドデザイン・ベスト100のご紹介は次回以降にも続きます。