デザイン経営の留意点を中小企業経営者の言葉から学ぶ(2)

おはようございます。中小企業診断士の山口達也です。

2週前にご紹介したロフトワークが作成した報告書
「中小企業のデザイン経営 経営者のビジョンが文化をつくる」
の後編です。

2020年10月21日:デザイン経営の留意点を中小企業経営者の言葉から学ぶ(1)
https://brand-design.seesaa.net/article/478031589.html

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デザイナーとどうつきあうべきか、
デザイン経営の留意点は何か、といった観点でご紹介して
補足しています。

株式会社パーク・コーポレーションの井上社長は
インタビューの中で次のように述べています。

「商売をやっていくには、
右脳だけではだめなんですよね。
だから現場にも左脳に強い人間も置くようにしています。
クリエイティブに強い人にはクリエイティブだけを、
マネジメントに強い人にはマネジメントだけを任せて、
二人セットで仕事をするようにさせているんです。」p.36

やはり適材適所。
デザイナーの良いところを活かしながら、
マネジメントは不得意な人が多いので
補う方が良いことが示唆されます。

福永紙工株式会社の山田社長は
インタビューの中で次のように述べています。

「10何年やってみて思うのは、デザインへの投資が
利益に結び付くまでには時間がかかるな、
ということです。今、『デザインに取り組むことに
よって、経営が劇的に改善する』ような風潮がありますが、
そんなに手軽で美味しいものではないですよね。
(中略)
『まずはデザインの力で、ちゃんと意味のあるものを
作ろう』という意識が大事だと思っています。」p.66

表面的なデザインではなく、
意味のあるデザイン、顧客にとって価値のある体験の
デザインを何度も粘り強く挑戦することが
デザイナーにも経営者にも求められます。

米富繊維株式会社の大江社長は
インタビューの中で次のように述べています。

「新しく入ったデザイナーが、なんとなく
可愛いものを作ると、どんどん値段が上がって
いってしまうんですよ。そういう原価計算については
社内で教えていくしかない」p.81

経験の浅いデザイナーでは
原価やビジネスの感覚があまりない人も多いので、
それらは企業側がデザイナーに教えて、
コストを抑えることも考えてもらうことが
必要になることも多いです。

株式会社ジャクエツの徳本社長は
インタビューの中で次のように述べています。

「インハウスのデザイナーと外部のデザイナーの
どちらも(中略)大切にしています。
社内のデザイナーだけだと、
どうしても自分たちの論理に頼って、
客観的な判断ができにくくなってしまう。
逆に、外部のデザイナーだけでも、
専門性が高い反面、守備範囲が狭くなりがち。」p.128

イノベーション(革新)を起こすにあたって、
外部デザイナーは刺激になり有効でしょう。
一方で業界知識や経験は豊富ではないので、
的外れな提案になることもありえます。

外部からの提案を、自社や業界に適応させて
実現させる力が重要です。

たねやグループの山本CEOは
インタビューの中で次のように述べています。

「パッケージのデザインを他社にお願いすることに
したんですね。でも、急に完璧になりすぎて、
お客さんの心が離れてしまった。」p.140

「私たちのような素人集団でも、
お菓子のことはよくわかっているから、
『このお菓子はこういう装いがいいんですよ』
と言うことはできるんです。」p.140

外部にデザインを依頼すると、
「商品への深い想い」が届きにくくなります。
社内でデザインするか、外部に想いをよく伝えて
デザインしてもらうか、どちらかが必要になります。

いかがでしたでしょうか。
デザイン経営の留意点として参考にしていただければ幸いです。

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