中小企業とデザイナーの双方から、
デザイン契約の契約書について相談を受けます。
そこで参考になりそうな、
ネットにあるデザインを発注する契約書で、
無料のひな型をご紹介します。

この記事では下の5つのひな型をはじめ、
その他、優れたwebサイトをご紹介します。
・文化庁「著作権契約書作成支援システム」
・中小機構「デザイン支援ツール」
・日本弁理士会「デザイナーにとってのデザイン契約」
・東京都中小企業振興公社「デザイン活用ガイド」
・大分県デザイン協会「オープンソース業務委託契約書」
・その他のひな型や参考になるwebサイト
文化庁「著作権契約書作成支援システム」
https://pf.bunka.go.jp/chosaku/chosakuken/c-template/
著作権契約を支援するシステムで
利用条件などをweb上で入力すると
wordで契約書案がダウンロードできます。
2006年につくられたシステムが、
SNSなどネットの進展に合わせて、
2022年4月1日にひな型をリニューアルされています。
イラストの作成のほか、映像の作成、写真の撮影、
イラストの公募、募集要項の作成にも使えます。
著作権のみに焦点を当てているので、
プロダクトデザインやロゴのデザインなど、
意匠権、商標権、不正競争防止法などが関わる分野では、
この契約書の条文だけでは足りませんので注意しましょう。
プロではなく一般人同士の契約を想定しているので
システムが提示する契約書文例は少し簡素です。
プロのデザイナーとしては、
もう少し細かく決めた方がよいかもしれません。
同じwebページ上にある
「誰でもできる著作権契約マニュアル」は
さすが文化庁で解説が親切でとても充実しています。
グラフィックデザイン系の契約書作成をするなら
一度は読まれることをお勧めします。
「誰でもできる著作権契約マニュアル」は
2006年3月に作成されたものです。
その後に改正された著作権法の内容は
巻頭に補足されていますので、その点は注意して読んでください。
他の人が書いているレビューでは、
「著作権契約書作成支援システム」では、
著作権はクリエイター側に残るものしか提示されない
というような記述も一部見かけましたが、
発注者が著作権を買い取る契約の文例も作成できます。
中小機構「デザイン支援ツール」
https://www.smrj.go.jp/tool/supporter/soft_asset4/index.html
デザイン活用支援ツールの(9)に
デザイン契約書のwordのひな型があります。
中小企業ではよく見かけるタイプの契約書です。
つくりは少し甘い感じで、
デザイナー側からみると不満のある契約と受け止める方もいるでしょう。、
wordでダウンロードでき、契約書作成のベースにしやすいです。
日本弁理士会「デザイナーにとってのデザイン契約」
https://www.jpaa.or.jp/cms/wp-content/uploads/2017/03/contractfordesigner20150421.pdf
JIDA(日本インダストリアルデザイナー協会)と
検討しながら作成したデザイン契約の考え方です。
世間によく出回っているデザイン業務委託契約書をもとに
デザイナーに向けてデザイン契約のポイントを
丁寧に解説しています。
デザイナーに配慮した内容です。
プロダクトデザイン、特許権、意匠権などの
取り決めにも対応した解説です。
ただ、留意を促すために示している契約書文例は
中小機構「デザイン支援ツール」のひな型と似ています。
また、解説は丁寧ですが、
解説に基づく契約書の文例がない箇所も多いです。
そのため、解説を踏まえて
具体的な契約書条文を作成することが必要で少し骨が折れます。
法律の知識をある程度もっていることを
前提としている感じも受けます。
契約事項の論点整理にはお勧めです。
東京都中小企業振興公社「デザイン活用ガイド」
https://www.tokyo-kosha.or.jp/support/shien/design/guide.html
巻末に「デザイン業務委託契約書」、
「デザイン・コンサルティング契約(1)」、
「デザイン・コンサルティング契約(2)」、
「秘密保持契約書」の例が記されています。
プロダクトデザインを想定した内容ですが、
親切な解説もついています。
デザインコンセプト、基本デザイン、
詳細デザイン、デザイン監理、
といった工程別の条文などは参考になります。
chapter3「デザイナーと契約しよう」に記されている
知的財産を守るためのチェックリストも
契約事項の論点整理に使えます。
デザイン活用ガイドもpdfファイルです。
大分県デザイン協会「オープンソース業務委託契約書」
https://www.design-oita.jp/topics/645
デザイン業務委託契約書だけでなく、
仕様書、工程表、見積書のひな型も提供してくれています。
mac向けもあり、デザイナーにはありがたいです。
中小機構のひな型より緻密に作られています。
webサイト制作にも対応しようとしています。
全体的にデザイナー側に有利な契約文例になっています。
著作権がデザイナーに残る契約書のひな型です。
著作権の買い取りを希望する中小企業は多いので、
その点は契約条文をよく理解して使用しましょう。
その他、弁護士や行政書士が公開している、ひな型も見ていきましょう。
骨董通り法律事務所
「デザイン分野における契約書作成・交渉のための基礎知識
-業務委託契約書のひな型を題材に各条項のポイントを解説-」
https://www.kottolaw.com/column/230227.html
著作権などを得意分野としている弁護士事務所です。
さすがの一言です。無料で公開はありがたいです。
契約書業務マニュアル(行政書士 竹永大)
フリーランスにおすすめのクライアントとの契約書のひな形
https://takecyankun.hatenablog.com/entry/2019/06/19/181654
著作権がデザイナーに残る契約書のひな型です。
第5条(利用許諾)や第6条(独占的利用許諾)、
第7条(著作者人格権)の条文は参考になると思います。
また、ひな型ではありませんが、
下の弁護士の解説も役立ちますので参考にしてください。
BUSINESS LAWYERS
デザイン会社やデザイナーが仕事を受ける場合に注意すべきポイント
https://www.businesslawyers.jp/practices/654
さまざまなひな形をご紹介しました。
相談を受けるときに私は、
相談者のこだわりを大切したうえで、
トラブルになりそうな点を意識して、
契約書条文に盛り込むようお伝えしています。
契約は相手との話し合いで決まるものですし、
内容は原則として自由ですから正解はありません。
ご紹介したひな型などを
いくつか見たうえで自社に適した契約を考えましょう。
権利を欲しがる気持ちはよくわかりますが、
権利の取得、保持にはお金もかかるので、
権利を持たない選択肢も考えたいです。
中小企業の場合は、それほど大きなお金が動かず
デザイン契約も頻繁に行わないなら、
これらの無料のひな型ベースで作成してもよいと思います。
プロのデザイナーは、自分の仕事の権利や報酬に関わる
重大事項なので、無料のひな型ベースだけでなく、
著作権や契約書に関する書籍で一度は学ぶことをお勧めします。
優れた契約書文例が記されている書籍もあります。
きちんと契約書を作成することで
デザインを依頼する側もデザイナーも、
トラブルなく、お互い気持ちよく仕事したいものです。
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