世界のデザインミュージアム トップ8

おはようございます。中小企業診断士の山口達也です。
暑中お見舞い申し上げます。

当ブログは当記事で888号となりました!
末広がりの八並びです。

今日はこれまで私が訪問して、
当ブログでご紹介したデザインミュージアムから
お気に入りトップ8を選びました。

惜しくもトップ8に入らなかったものの、
訪問したデザインミュージアムの記事リンクもまとめました。

第8位 ブランド、パッケージ、広告博物館
https://museumofbrands.com

bpa02.jpg

イギリス・ロンドンにある
英国のパッケージ・ポスターなどの博物館です。

年代別の展示や、ブランドの進化がわかる展示もあり、
ブランドやデザイン好きにお勧めです。

ブランド、パッケージ、広告博物館
https://brand-design.seesaa.net/article/399868876.html


第7位 家具と木工彫刻美術館
https://www.milanocastello.it

家具と木工彫刻美術館07.jpg
家具と木工彫刻美術館08.jpg

イタリア・ミラノのスフォルツェスコ城博物館にあります。
19世紀から20世紀の家具が中心に展示されています。
イタリアらしい、華やかなデザインや
優美なデザインを楽しめます。

ミラノの家具と木工彫刻美術館
https://brand-design.seesaa.net/article/453975849.html


第6位 アドミュージアム東京
https://www.admt.jp

admuseum06.jpg

日本で唯一の広告博物館、図書館です。

江戸時代からの日本の広告デザインを学べます。
ポスターが多いですが、最近の映像広告もあります。

図書コーナーも併設されています。

admuseum08.jpg

いろいろ学べます。

リニューアルしたアドミュージアム東京と広告図書館
https://brand-design.seesaa.net/article/476676789.html


第5位 ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(V&A)
https://www.vam.ac.uk/

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イギリス・ロンドンにある
ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(V&A)は
世界で最も歴史があり、かつ
世界最大のデザイン・アート美術館(博物館)です。

展示分野は、衣服、タペストリー、テキスタイル、
演劇装飾、写真、宝石、金・銀製品、ガラス、鉄工芸、
彫刻、陶磁器、家具、絵画、建築などと広く、
なんでも集めている感じです。

世界中のデザインがあり、また1000年位前の展示品もあります。

とても広くて全部見ることは困難です。
飽きることのないデザインミュージアムです。

ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(1)
https://brand-design.seesaa.net/article/398191983.html
ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(2)
https://brand-design.seesaa.net/article/398829257.html
ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(3)
https://brand-design.seesaa.net/article/399360431.html


第4位 サムスン美術館「Leeum」
https://www.leeum.org

サムスン美術館02.jpg

韓国・ソウルの「リウム」が第4位です。

デザインミュージアムより美術館、
という意見もあるかもしれませんが、
常設展の青磁や白磁、仏教美術などが特に素晴らしく、
作品だけでなく、建物も展示も美しくて感激しました。

東洋のデザイン、東洋美術の良さを堪能できます。

訪問した時は、日本語のwebサイトもあり、
デジタルガイド(オーディオガイド)も
日本語対応していました。

GalaxyNoteが端末でした。
サムスン製品のデザインも良かったです。

サムスン美術館「Leeum」
https://brand-design.seesaa.net/article/423722528.html


第3位 ディ・ノイエ・ザムルング
https://dnstdm.de

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ドイツ・ミュンヘンにあるピナコテーク・デア・モデルネの
地下にディ・ノイエ・ザムルングがあります。

この100年ほどのプロダクトデザインの名品が多いです。
この期間のデザインの幅や量では一番だと思います。

ディ・ノイエ・ザムルング(Die Neue Sammlung)前編
https://brand-design.seesaa.net/article/446856794.html
ディ・ノイエ・ザムルング(Die Neue Sammlung)後編
https://brand-design.seesaa.net/article/447073908.html


第2位 デッサウのバウハウス校舎
https://www.bauhaus-dessau.de/de

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ドイツ・デッサウにあるバウハウスの校舎は、
建築、デザイン好きが訪れています。

技術を生かして、機能性、生産性を高く、
そして美しいデザインを目指した
挑戦的な活動の跡が伺えます。

デッサウのバウハウス校舎(1)
https://brand-design.seesaa.net/article/441164621.html
デッサウのバウハウス校舎(2)
https://brand-design.seesaa.net/article/441361562.html
デッサウのバウハウス校舎(3)
https://brand-design.seesaa.net/article/441556069.html


第1位 MoMA
https://www.moma.org

MoMA01.jpg
MoMA12.jpg

ニューヨークのMoMAが第1位です。

1880年代以降の絵画、彫刻、写真、映像、建築、デザイン
などが収蔵・展示されています。

現代美術の殿堂であり、デザインのコレクションは素晴らしいです。
また行きたいデザインミュージアムです。

MoMAレポート(1)
https://brand-design.seesaa.net/article/194816385.html
MoMAレポート(2)
https://brand-design.seesaa.net/article/195914139.html
MoMAレポート(3)
https://brand-design.seesaa.net/article/197050037.html
MoMAレポート(4)
https://brand-design.seesaa.net/article/198306353.html


以下は、惜しくも選外となったデザインミュージアムです。

日本・東京
21_21 DESIGN SIGHT
https://brand-design.seesaa.net/category/5183514-1.html

常設展がなかったので選べませんでした。
日本のデザインミュージアムとして今後も期待します。

イギリス・ロンドン
ロンドンのデザインミュージアム
https://brand-design.seesaa.net/article/400393494.html
ロンドンのデザインミュージアム(2)
https://brand-design.seesaa.net/article/400977744.html

移転前に行きました。
移転後に行っていないのでお勧めする自信がありませんでした。
移転後はどんなミュージアムに変わったか楽しみです。

スペイン・バルセロナ
バルセロナデザインミュージアム(1)
https://brand-design.seesaa.net/article/462132785.html
バルセロナデザインミュージアム(2)
https://brand-design.seesaa.net/article/462261961.html
バルセロナデザインミュージアム(3)
https://brand-design.seesaa.net/article/462396265.html
カタルーニャ美術館
https://brand-design.seesaa.net/article/465810155.html

イタリア・ミラノ
トリエンナーレデザインミュージアム(Triennale Design Museum)
https://brand-design.seesaa.net/article/453138700.html

韓国・ソウル
東大門デザインプラザ(DDP)
https://brand-design.seesaa.net/article/421317866.html
東大門デザインプラザ(2)
https://brand-design.seesaa.net/article/421707381.html
東大門デザインプラザ(3)
https://brand-design.seesaa.net/article/422103308.html
ハンガラムデザイン美術館
https://brand-design.seesaa.net/article/425308184.html

ドイツ・ベルリン
バウハウス・アーカイブ・ミュージアム
https://brand-design.seesaa.net/article/442165028.html

フランス・パリ
フランス国立近代美術館(ポンピドゥーセンター内)
デザインと現代アートのフランス国立近代美術館
https://brand-design.seesaa.net/article/368600078.html
装飾芸術美術館
https://brand-design.seesaa.net/article/370909461.html

それぞれの特長や良さがあって
評価の順位はつけられませんが、
私がもう一度見てみたい、
好きなデザインミュージアムをご紹介しました。

また、世界中のデザインミュージアムに
どんどん行ける日が来ることを願っています。

貂明朝、IBM Plex Sans JP、Kintoに注目

おはようございます。中小企業診断士の山口達也です。

Adobe Fonts(無償版)の日本語フォントの中から私が注目した
「貂明朝」「IBM Plex Sans JP」「Kinto」
3つのフォントをご紹介します。

まずは「貂明朝」から。
「てんみんちょう」と読みます。
Adobeが自ら作成して提供しています。

流れるような手書きの要素もある書体で
かわいらしく、雰囲気も出せる感じです。

tenmincho.jpg

Adobeも次のように語っています。
Adobe Typekit Blog日本語版「可愛らしくも妖しい『貂明朝』登場」
https://blog.typekit.com/alternate/ten-mincho/

「貂明朝を従来の明朝体から際立たせている特徴は、
躍動感のある手書きの文字の特徴に加え、
江戸時代の瓦版印刷に見える
運筆の特徴も取り入れていることです。」

「伝統的な明朝体の画線の先端を丸め、
やや太めに仕上げ、ふところは小さめにしています。」

貂明朝は短めの本文でも使えるような汎用性もあります。

次にIBM Plex Sans JPはIBMが提供している書体です。

IBM Plex Sans JPは、
Thin、ExtraLight、Light、Regular、
Text、Medium、SemiBold、Bold
の8種類の太さがあるゴシック体の書体です。

IBMPlexSansJP03.jpg

8種類あるのでデザインの幅が広がります。

IBM THINK Blog Japan
「オープンソース・フォント『IBM Plex』誕生の経緯

https://www.ibm.com/blogs/think/jp-ja/how-ibm-plex-an-opensource-font-was-born/

Kintoは、サイズやバランスを欧文フォントに合わせた
ユーザーインターフェイス用日本語フォントです。
https://github.com/ookamiinc/kinto/blob/master/README.md

日本語を少し小さくしてバランスをとっています。
日本語と英語を交ぜて使う時に
簡単にきれいに並べられて便利です。

kintoSans02.jpg

一般的な書体では英語が小さく読めます。
下は源ノ角ゴシックです。英語が日本語より小さく見えます。
小さい差なので画面では見づらくて申し訳ありません。

genno01.jpg

ちなみにIBM Plex Sans JPもバランスを配慮しているように見受けられます。

KintoもIBM Plex Sans JPも
ユニバーサルデザインのような見やすさと
美しさのバランスもを考えていると思います。

Googleがフォントも無料に!フリーフォントのGoogle Fonts

おはようございます。中小企業診断士の山口達也です。
Google Fontsのご紹介です。
https://fonts.google.com

Google Fontsは、Googleが無料公開しているwebフォントのサービスです。

googlefonts01.jpg

webフォントは、webサイトの制作者が
指定したフォントでwebサイトを読めるようにした仕組みです。

webフォントはホームページ制作者でないと使いませんが、
Google Fontsのフォントはサイトからパソコンにダウンロードして、
普通にWordなどの印刷物に使うこともできます。
商用利用もできます。

1358種類(ファミリー)のフォントがあり、
日本語フォントも53ファミリーあります。

丸ゴシックや手書き風、毛筆フォントなど個性的な書体もあります。

googlefonts03.jpg

会社によっては、フリーソフトなどのダウンロードに
制限をかけている中小企業もあると思いますが、
Google提供なら上司の許可も得やすく、メリットはあると思います。

また、Googleが提供する
「Noto Sans Japanese」と「Noto Serif Japanese」は
それぞれ細字から極太まで6ウェイト、7ウェイトありますので、
字の太さのバリエーションはつけやすいです。

googlefonts02.jpg

源ノ角ゴシック、源ノ明朝を使っている方は、
「Noto Sans Japanese」「Noto Serif Japanese」と
基本的に同じですので、新たにダウンロードしなくてよいでしょう。

Google Fontsの最大の問題は
英語でサイトが作られていて、ライセンス条項を読んでも
どこまでが許可されているがわかりにくいことです。

ライセンスはそれぞれのフォントで
自分で読んで確認することになりますが、これが難しいです。

印刷やグラフィックの画像に使用する分には、まず問題なく
ほとんどの中小企業では無料で自由に使えるという理解で構いません。
「MSゴシック」や「メイリオ」と同じように使ってよいです。

フォントファイルの再配布や、ソフトウェアに組み込む場合など、
フォントデータを第三者に提供する場合はよく確認してください。

日本企業におけるデザイン経営の取組み状況2020年度

おはようございます。中小企業診断士の山口達也です。
今日のテーマは日本デザイン振興会が昨年度実施した
企業経営へのデザイン活用度調査の結果についてです。

日本デザイン振興会「企業経営へのデザイン活用度調査結果発表」
https://www.jidp.or.jp/2020/11/25/DesignManagementReport

日本デザイン振興会プレスリリース2020年11月25日
企業経営へのデザイン活用度調査結果発表
https://www.jidp.or.jp/media/d6d36c03-efd7-42fc-a501-f70d4d783082

下の見出しが躍っています。

jdp_designmanagement2020.jpg
「デザイン経営」に積極的な企業ほど高い売上成長を実現し、
従業員からも顧客からも愛される可能性を示唆

調査結果トピックスサマリー
相関関係として、デザイン経営に積極的な企業ほど
●売上成長率は高い傾向にある。特にエンドユーザー向け企業、デジタルに積極的な企業は顕著
●デザインへの投資は増加し、将来的な効果への期待が高い傾向にある
●従業員からも顧客からも愛される傾向にある

調査結果報告は下のURLから読めます。
https://www.jidp.or.jp/media/f10d6c71-6e09-40e1-ba47-2573fbe657d3

調査結果の概要は上の見出しの通りですが、
調査結果を読み解くうえで留意したいことをいくつかコメントします。

まず調査対象は、
グッドデザイン賞に応募したことのある企業に限られています。

デザインにある程度注力している企業ですので、
・デザイン経営に対して前向きなコメントがでやすい
・グッドデザイン賞に応募できるほど、
デザインが具現化した(ひとつの成果となった)
成功体験があることは念頭に置いて読んだ方が良いです。

次に、相関関係を示しており、
因果関係を示しているわけではないことです。

デザイン経営の取り組み度合いと
売上成長には相関性が見られますが、
デザイン経営に積極的に取り組むと
売上成長しやすいとは必ずしも言えません。

売上成長している企業ほど、デザイン経営に
積極的に取り組む傾向にあるのかもしれませんし、
組織文化が好ましい企業ほど、
売上成長とデザイン経営への取り組みを
積極化させているかもしれません。

きちんと調査報告を読めば、
上のようなことが読み取れますが
見出しだけで判断すると誤解する人も出てきそうです。
(老後2000万円問題も同様です)

ただ、私は調査報告を否定するつもりはありません。

むしろ、デザインの成果を証明することが簡単ではない中で
意欲的にこのような調査に取り組んでくださったことに
感謝しています。貴重なデータです。

私はデザインに注力して業績を上げる中小企業を
たくさん知っていますので、
見出しの内容も納得もできますが、中小企業診断士として、
情報を正確に読んでほしいと思いコメントしました。

12月18日に追加公表された
個別の設問別の結果も役立つ情報が詰まっています。
https://www.jidp.or.jp/media/a1a62fe8-ef18-4eea-8f69-2d702a7db698

グッドデザイン賞応募経験企業が対象の調査ですが、
以下のようなデータが目に留まりました。

「デザイン系職種」人材がいない企業が32.1%。

「組織もチームもないが、
プロジェクトごとに外部のデザイナーや
デザイン会社と連携している/したことがある」が33.6%。

デザインを専門とする組織や
外部のデザイナー等が担っている役割として、
「個別事業/製品/サービスのビジネスモデル全体の設計」が11.1%、
「全社的な経営計画・経営戦略策定」が10.6%。

デザイン系職種に対して経営や事業開発を理解して
もらうための取組や教育・研修を
「積極的に推進」5.1%、「推進している」14.0%、「検討中」15.0%。

「デザインへの投資」は過去と比べて
「増加している」22.6%、「やや増加している」35.6%。

これまで「デザイン系職種」として現場業務に従事
していた人材が、経営陣に参画した例は
「ある」15.0%、「ない」72.0%。

デザイン経営推進上の課題は
「費用対効果の説明が困難」45.8%、
「新商品・サービスデザインをリードできるデザイナーの不足」43.8%

デザイナーが経営全般に関わっている企業は
かなり少なく、社内にデザイナーはおらず、
社外デザイナーと連携する企業も多いことが伺えます。

中小企業は外部のデザイナーと連携するところから
始めるのがやはりよいでしょう。

デザインにぴんとこないビジネスパーソンのための“デザイン経営”ハンドブック

おはようございます。中小企業診断士の山口達也です。
先週は熱海銀座商店街の話題でしたが、
その後、熱海では大きな土砂災害がありました。お見舞い申し上げます。

今日は特許庁が作成した
デザインにぴんとこないビジネスパーソンのための“デザイン経営”ハンドブック」をご紹介します。

デザインにピンとこない.jpg

デザイン思考(デザインシンキング)の実践者が
エッセンスを語っています。

デザインコンサルティングファームのIDEOの
トム・ケリーさんは
1章で「共感・実験・ストーリーテリング」で次のように述べています。

デザインシンキングにおいて大事なのは、解決すべき課題をいかに探すか、にあります。

相手の立場に寄り添い、相手がそうしているように世界を見つめ、相手が思考するように思考することが大切です。

共感をもって人や社会を丁寧に観察することで、自分たちの予想を裏切るような「課題」が見いだされたときにこそ、優れたプロジェクトは生まれます。


デンマーク・デザイン・センターCEOの
クリスチャン・ベイソンさんは
6章「KPIを立てていけない」で次のように述べています。

デザインシンキングの導入においては「解」がないという前提を受け入れることがとても重要です。
予想外の発見に驚かされることを楽しむようなマインドセットが必要なのです。

ちなみにKPIは「Key Performance Indicators」のことで、
目標達成のための管理指標を表します。

16ページの冊子ですが内容は高尚です。
言葉に重みがあります。

デザイン思考やデザイン経営の入門者にはやや難しく、
知識をある程度お持ちの方がぴんと来るハンドブックです。

KPIを設けないこと、失敗を恐れないことは、
新しい挑戦において有効で私は賛成です。
このハンドブックはよい指針を示していると思います。

しかし、このハンドブックを免罪符にして、
デザインにコスト感覚がなくなったり、
デザイナーが失敗続きでも仕方ないと考えたりしてほしくはないです。

そんなに余裕のある中小企業は多くないのが現実です。

従業員や債権者、株主の全員から
デザイン経営の理解を得ることは簡単ではありませんから、
中小企業のデザイン経営の導入では小さく始めて、
成果も出すことが重要です。

このあたりのノウハウは、
ハンドブックのご紹介から離れますので、
また別の機会に話したいと思います。

のらもじからロゴタイプの深さを知ろう

おはようございます。中小企業診断士の山口達也です。
今日の話題は「のらもじ」です。

noramoji01.jpg
http://noramoji.jp/
https://www.instagram.com/noramoji/
https://medium.com/@noramoji

のらもじ発見プロジェクトは、街なかにある
個性的で味のある文字を「のらもじ」と名付けて、
発見、分析、フォント化するプロジェクトです。

2013年、14年ごろに話題になったあと、活動への批判もありました。

プロジェクトの意義は面白く評価できます。
一方で創作者のデザイナーへ報酬が支払われないことや
「野良」が敬意を欠くという意見も一理あると思います。

それらの話は脇に置いて、本日私が取り上げたのは、
(特にフォント化された)のらもじから
書体の魅力や連想されるイメージを感じてほしい
ということです。

私はロゴへの費用を安くする方法として、
ロゴマークを作らずロゴタイプだけにする方法を
お伝えしています。

のらもじは文字だけでも豊かなイメージを
伝えられることを立証しています。

また、デザインには流行があることも
知ってほしいと思います。

あなたの企業への思いを書体に込めて
良いロゴタイプを作って欲しいと思います。
もちろんデザイナーに依頼してよいです。

2020年をデザインで振り返る

おはようございます。中小企業診断士の山口達也です。
2020年のデザインを振り返ります。話題は3つです。

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一つ目は新型コロナウイルスに関してです。

東京都「新型コロナウイルス感染症対策サイト」
ソースコードをオープンにしました。
https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/

神奈川県のwebサイトも、
東京都のコードを利用して作成されたと思います。
https://www.pref.kanagawa.jp/osirase/1369/

東京都の取り組みは高く評価したいです。

YAHOO!の「新型コロナウイルス感染症まとめ」
分かりやすく、よく見ました。
https://hazard.yahoo.co.jp/article/20200207

webサイトをどう構築するか、
どうわかりやすく見せるか、改善に終わりはなく、
デザインの力が求められています。

インフォグラフィックスであったり、
情報の編集であったり、
巨額の補正予算のうち、新型コロナの
広報デザインにももう少し使って欲しいものです。

わかりやすく伝える工夫が
メディア任せになっています。

二つ目の話題は企業のノベルティです。

マスクやマスクケースが爆発的に増えました。
もらって喜ぶ人が多いですからね。

私も先日、冒頭の写真のマスクケースをいただきました。

レジ袋有料化に伴いマイバッグも増えました。

マイバッグは、あふれ気味なので、
おしゃれなデザインや使い勝手が良くないと
かえって不評になるようです。

三つ目の話題は、今年から
物品に記録・表示されていない画像デザインや、
建築物の外観、内装も意匠登録できるようになりました。

2020年07月01日「意匠法改正でデザイン・ブランドの保護が拡充」
https://brand-design.seesaa.net/article/476007843.html

この意匠法改正によって登録された事例が出始めました。

小糸製作所の「車両情報表示用画像」
https://www.meti.go.jp/press/2020/11/20201109002/20201109002.html

くら寿しは「回転寿司店の内装」として登録しています。
(意匠登録第1671153号)
https://www.meti.go.jp/press/2020/11/20201102003/20201102003.html

中小企業でも権利化すべき意匠が検討されて、
これから登録されていくものと思われます。

ブランドで個性は重要。しかしお客様にも合わせよう

こんにちは。中小企業診断士の山口達也です。
今日は私の地元、横浜市鶴見区にある
パキスタン料理店「DERA D-43」の話です。
https://tabelog.com/kanagawa/A1401/A140210/14075638/

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昼食で先日、マトンのビリヤニを食べました。
羊肉入りの炊き込みご飯です。

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スパイスとハーブが効いていて美味しかったです。

初めて食べたので現地の味か、私にはわかりませんが、
本格的なパキスタン料理をアピールしていて、
キッチンやホールの人も現地出身のように見えます。

日本語で接客してくれますのでご安心ください。

その他にもパキスタンやインドで食べられる
カレーをはじめとする料理がメニューとしてあります。

derad-43_3.jpg
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昨年オープンした店で外装や内装はきれいです。
食べログ、Facebook、Instagram、Googleマイビジネスなど
ネットでの情報発信も行っています。

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と、ここまでは良いのですが、外から店をのぞくと、
新型コロナウイルス感染症の影響も大きく、
来店客数は伸び悩んでいるようです。

ブランド戦略では普段、個性、本物、差別化、
こだわりが重要と私はよく申し上げます。

しかし「DERA D-43」に関しては
個性や本格度合いなどが行き過ぎて
客層が狭くなっているように私には見えます。

店のオーナーの思いやアイデンティティと、
消費者に合わせるマーケティング戦略の両立が
お客様を取り込むためには重要です。

こうしたことのバランスは難しいですが、
いろいろと対応策はあります。
ご相談いただけると嬉しいですね。

少し変えれば大きく伸びるタイプの店です。

無料のユニバーサルデザインフォントを使おう

おはようございます。中小企業診断士の山口達也です。
多くの人にとって読み間違えにくい書体を
ユニバーサルデザイン書体といいます。

ユニバーサルデザイン書体の使用は
お客様や取引先、従業員にとってありがたいです。

ご自身では不都合を感じていなくても
小さい文字は読みにくい、
と感じている人はいらっしゃいます。

店舗の案内やビジネス書類で使うと良いでしょう。

ユニバーサルデザインフォント(UDフォント)は
いくつかのメーカーから発売されていますが、
モリサワからゴシック体と明朝体が無料で提供されています。

MORISAWA BIZ+(モリサワビズプラス)に会員登録すると
「BIZ UDゴシック」と「BIZ UD明朝」が
無料でダウンロードできます。
https://www.morisawa.co.jp/products/fonts/bizplus/

商用利用可です。
印刷物やwebサイトなどに使えます。
(ロゴの商標登録はできません)

小さい文字で実際に見ていきましょう。

下はゴシック体です。
「BIZ UDゴシック」は一番下です。

windowsにある書体と、
無料の源ノ角ゴシック、IPAゴシック、
私が好きなヒラギノと比べました。

bizudpgothic.jpg

同じ文字の大きさ(ポイント数)ですが、
「BIZ UDゴシック」は読みやすいと思います。

アルファベットの
大文字の「あい」、小文字の「える」、数字の「いち」を
並べましたが、一番見分けやすいです。

数字の「はち」と「さん」「ろく」の見分けも
字が開いているので区別しやすいです。
字を丸めていません。

数字の「なな」も左に縦棒(ひげ)が唯一ついています。

濁音の区別、「ブ」と「プ」、
「ば」と「ぱ」はあまり違いませんが、
総合的に一番読み間違えにくい書体だと思います。

明朝体はどうでしょう。
「BIZ UD明朝」は一番下にあります。

bizudpmintyo.jpg

明朝は横棒が細いのですが、
UD明朝では縦、横ともに少し太く、
横は特に太くしているようです。

明朝はゴシックに比べれば
全ての書体が見えづらいですが、
「BIZ UD明朝」は明朝体の比較では
優れていると思います。

アルファベットの
小文字の「える」と数字の「いち」は
どの書体も見分けにくいですね。

大きい文字で比べてみたときは
「BIZ UD明朝」も良かったですが、
「源ノ明朝」が区別しやすかったです。

数字やアルファベットの区別のしやすさは
GoogleとAdobe、イワタに軍配を上げたいです。

ただ、「源ノ明朝」はちょっと個性的です。

「BIZ UD明朝」は万人に好かれそうな形ですし、
プロポーショナルフォントとして
文字が詰まっているので、
これを使えば間違いないという感じでしょうか。

役所などのお堅い組織でも受け入れられやすそうです。

2018年をデザインで振り返る

おはようございます。中小企業診断士の山口達也です。
今年も残り10日となりました。
2018年のデザインを振り返ります。

バーチャルユーチューバーとストローを取り上げます。

バーチャルユーチューバー(VTuber)は、
YouTubeに出演する架空のキャラクターです。

キズナアイさんが有名です。


コンピューターグラフィックで描いたキャラクターに
人が扮しています。

いろいろな作成方法があるようですが、
モーションキャプチャーを身に着けて、
人の動きと同じようにキャラクターを動かす方法を
テレビで見ました。

声の主は声優だったり、ボイスチェンジャーを使ったり、
制作者そのままだったりするそうです。

企業の活用事例としては、
一般的なユーチューバーと同じように
タイアップして商品宣伝してもらうものもありますが、
サントリーやロート製薬のように、
自社でバーチャルユーチューバーを制作する会社もでてきました。



ご紹介した動画は、しっかり広告宣伝していますが、
宣伝していない動画もあります。
宣伝が強すぎると視聴者が嫌うから、
バランスをとっているのでしょう。

単にYouTubeに動画をアップするのに比べて、
手間がかかるので、中小企業ではそれほど取り組まれていませんが、
自分ではないキャラクターを設定できる点は魅力ですし、
かわいらしいキャラクターが好きな人もいますから、
うまく運用する中小企業も近いうちに出てくると思います。

もうひとつはストローです。
プラスチックの海洋汚染が話題になり、
プラスチックストローを
紙のストローに置き換える動きが出てきました。

プラスチック製品はストローだけではないので、
ストローだけが話題になるのは変な気もしますが、
中小企業でもプラスチック削減の動きは強まると思います。

プラスチックストローが1円くらい、
紙ストローが3円くらいですので費用は増えます。

また、紙ストローは、耐久性や口で触った感触、
曲げられないなどの点でプラスチックに及びませんが、
レジ袋などの包装資材の削減とともに検討課題となるでしょう。

どんな体験を売るか、どんな社会を目指すか、
の象徴になってきています。

上に挙げた課題を解決するストローのデザインが期待されます。
来年のグッドデザイン賞では受賞するストローがでるでしょうか。

国際デザイン&広告賞「D&AD賞」特別レクチャー

こんばんは。中小企業診断士の山口達也です。
国際デザイン&広告賞「D&AD賞」のセミナーに行きました。

danddaawardsentry02.jpg

セミナーは、GOOD DESIGN EXHIBITION 2018の中で
国際デザイン&広告賞「D&AD賞」特別レクチャー
として開催されました。

第1部は「Creativity for Excellence - 卓越した創造力」
として、D&AD 最高執行責任者のDara Lynch氏の講演でした。

D&ADの紹介やデザイン、広告のトレンドの話がありました。

D&AD(Design & Art Direction)は、1962年にイギリスの
非営利団体として創立されました。

デザインと広告の発展、支援を目的に
創設されたD&AD賞は審査も厳しいです。

約80か国から約20,000作品の応募があり、
受賞は700作品程度です。

国別では日本は米国や英国に次いで3番目に多い受賞数のようです。
webサイトでは48の受賞がありました。

ちなみに今年の日本の受賞作品を例示として、リンクを貼ります。
ご参考まで。
https://www.dandad.org/awards/professional/2018/graphic-design/26936/laforet-grand-bazar-2017-summer/
https://www.dandad.org/awards/professional/2018/product-design/27139/cogy-wheelchair/

広告は、時代を切り取って映し出すところもあります。

今はグローバル化、難民・移民の受け入れ、
人間や文化の多様性、自国第一主義、
といったものを意識した広告やデザインが
現在のトレンドになっているようです。

第2部は「Creative Directors In Conversation-審査会から見た世界のデザイン」
として、中村至男氏(D&AD賞 グラフィックデザイン部門審査員)、
堀宏行氏(D&AD賞 デジタルデザイン部門審査員)、
Tommy Li氏(2016年D&AD賞グラフィックデザイン部門審査員/AGI中国代表)、
菅付雅信氏(モデレーター)のパネルディスカッションでした。

審査の特徴について話してくれました。

審査員も50か国から250名、男女もおよそ半々で多面的な評価をしています。
D&AD賞の審査の特徴として、審査員による議論が多いと話していました。

まるまる3日間ディスカッションするらしいです。

審査基準は次の3つですが、
An original and inspiring idea.
Exceptionally well executed.
Relevant to its context.

おおざっぱに解釈すると、
独創的であること、
丁寧に作られていること、
時代や社会・文化の流れを意識したものであること、
という感じです。

コンテクスト評価の難しさが語られていました。

その土地由来なものが外国では新鮮に映ります。

例えば、日本では魚拓になじみがあるが、
外国の審査員には刺激的に見えるようです。

世界中から審査員を集めて、
ディスカッションすることで
その地域の文化も理解しながら
審査するよう努めています。

私は最近、消費において、
文化の香りを与えることの魅力を感じます。

広告で楽しく美しい生活の提案ができるとよいですね。

11月から来年のD&AD賞のエントリーが始まっていました。
https://www.dandad.org/en/d-ad-awards/

danddaawardsentry01.jpg

審査料は応募する部門によって異なり、
数万円から10万円を超える部門もあります。

これからも日本のクリエイティブが
世界に積極的に発信されることを期待したいです。

デザイン料金の相場の目安

おはようございます。中小企業診断士の山口達也です。

相談を受けていると、
「デザイナーに頼むといくらかかりますか?」
という質問をよくいただきます。

おおよそのイメージはお答えしていますが、
仕事内容やデザイナーによって価格は大きく異なるのも事実です。

参考になるwebサイトをご紹介します。

名刺、ハガキ、チラシ、ポスター、ロゴの
グラフィックデザインの料金について、
平成の終わり汁さんがTwitterに投稿しています。
https://twitter.com/anmain2525/status/1014519373103443972

design-47さんがwebサイトの制作費用について
ブログ「デザインを相談してみよう」に記しています。
【料金表第2弾】Webサイト制作いくらかかるか?フリーランス・SOHOの制作代金 100社まとめ
http://design-47.hateblo.jp/entry/webdesign

多くの企業のデザイン料金表を見たうえで、
全10ページ程度の簡単なウェブサイトの場合、15万円~30万円程度くらいでしょうか。

とまとめています。

design-47さんはロゴ制作についても調べています。
【第三弾】ロゴ制作をデザイン会社に頼むといくら?73社の料金表をまとめてみた
http://design-47.hateblo.jp/entry/logo

ロゴについては
ロゴデザイン(テキスト部分)で3万円くらい、ロゴマークで5万円くらいのようです。
全て一括で依頼する場合には予算を10万円くらいに設定にしておくと良いでしょう。

とまとめています。

以前は、design-47さんのブログ「デザインを相談してみよう」で
【2015年】チラシのデザインを頼むといくらかかるか?97社の料金表を調べてまとめてみた。
という記事があって、そちらもご紹介したかったのですが、
今は残念ながら見られなくなっています。

プロダクトデザイン(製品デザイン)は、
私が12年前に東京都中小企業振興公社で
「デザイナー活用ガイド」を制作しましたので、
その内容を一部お伝えしましょう。(今は絶版で見られません)

designer活用guide.jpg

工業デザインの製品企画、基本デザイン、詳細デザイン、
デザイン修正、デザイン評価までをすべて行うと
175~1050万円と幅をもって記されています。

具体例もデザイナーに伺って、イメージとして
コンセプト提案、基本デザイン、詳細デザインを通して
270万円から340万円で行う例を3つ記しました。

これらはあくまで価格表です。
グラフィックデザインにせよ、プロダクトデザインにせよ、
依頼の仕方や、デザイナーとの関係の築き方によって
実際の価格は変わりますので、そこには工夫の余地があります。

2016年をデザインで振り返る

おはようございます。中小企業診断士の山口達也です。

今年のデザインの話題としてはポケモンGOと
東京五輪・パラリンピックのエンブレムが
印象に残りました。

「ポケモンGO」は、ナイアンティックと
任天堂の関連会社のポケモンが、
共同開発したスマートフォン向けのゲームです。

拡張現実(AR)の技術が使われており、
現実の位置情報とゲームの世界が重なっています。

スマートフォンを持って街を歩くと、
ポケモンと会え、ポケモンを集めたり、
育てたりするゲームです。

移動しないとゲームが楽しめないしかけで、
ゲームによって、新しい場所へ出かける
動機を産みました。

ゲームに夢中になったまま移動する人もおり、
事故を誘発してしまう側面があることは
残念ですが、新しい技術の楽しみ方を
提示したことも事実だと思います。

もちろん、ヒットにはキャラクターや
ゲーム性の良さも大きいと思います。

ゲームはバージョンアップしていくようです。
よりよいゲームに進化することを期待します。

もうひとつの話題は、2020年東京五輪・
パラリンピックのエンブレムです。

最初に決定したエンブレムの撤回を
決めたのが昨年9月でした。

昨年の秋にエンブレムの公募を開始し、
今年の4月に最終候補4作品を発表しました。

そして4月25日に、野老朝雄(ところあさお)さん
がデザインした「組市松紋」(くみいちまつもん)
に決定しました。

tokyo2020emb.jpg

日本らしい藍色と市松模様を活かしたデザインで、
精緻な造形も日本らしく思えます。

ちなみに、最終候補4案の中で
私が一番良いと思ったデザインでした。

エンブレムにこめられたメッセージなどは、
以下のURLをご覧いただくとよいです。
https://tokyo2020.jp/jp/games/emblem/

エンブレムが、どのように使われるかも大切です。
今後注目していきましょう。

今年一年間、当ブログにお付き合いいただき、
ありがとうございました。
来年もよろしくお願いいたします。
皆様、よい年をお迎えくださいませ。

2015年をデザインで振り返る(3)東京五輪・パラリンピックのエンブレム問題(下)

おはようございます。中小企業診断士の山口達也です。
エンブレム問題の続きです。

今回の件で、日本のトップの
グラフィックデザイナーの質に疑問符が
ついてしまいました。

佐野氏のエンブレムは、
2位以下の応募作を引き離して審査では選ばれたと
組織委員会の武藤事務総長は説明しました。

群を抜いた1位のデザインですが、
国民の多くは造形的に好んでいなかったようです。

佐野氏のエンブレムはよいので使うべきだとする声は少なく、
むしろ、招致時に使用した桜のリースのロゴが
よかったという声を多く耳にしました。

招致ロゴ.jpg

2位となった原研哉氏は、
後に応募したエンブレムを公開しましたが、
原氏のデザインが素晴らしいので採用すべきだ、
という意見も大きなうねりにはなりませんでした。

原研哉氏が公開した作品
http://www.ndc.co.jp/hara/detail/olympic2020/00.jpg
原研哉氏ロゴ.jpg

そこから透けて見えるのは
日本のトップデザイナーに限ったはずの
今回のコンペのデザインの質・数が
貧しかったのではないかという疑念です。

私は、応募資格を狭め、限られた専門家がしっかり審査する
コンペも悪くないと思っています。

国民の多数派がいつも正しいとは限りませんし、
審査員が、先見性や鋭い審美眼、責任感をもち
後世にはきっと理解されると言い切って選んでもよいと思います。

しかし、そこにはプロとしての絶対的な質の高さが必要です。

今回の件は、質に大いに問題ありとされ、
プロが国民を押し切れなかったと考えることもできます。

佐野氏は亀倉雄策賞や毎日デザイン賞などを受賞した
日本のトップデザイナーでした。

ただ、サントリーのトートバッグや羽田空港の写真を見ると、
その仕事ぶりはあまりに酷いものです。

デザイン賞の選考委員の目利き力も問われます。

一部の人の大失態で、
デザイン業界は信用を失ってしまいました。

胸を張れる仕事を続けることで、
取り返していくしかありません。

記事の本論から離れるため触れませんでしたが、
次の2点についても問題意識も持っております。

望ましいデザインができなかった原因は、
デザイナーだけでなく発注者の問題も大きいこと。

コンペにおいて選ばれなかった作品に
報酬が支払われないことに検討の余地があること。

今回はマスコミやネット、街中での会話で
数えきれないくらいの
さまざまな問題提起がなされました。

私が気づかないうちに、デザイナーに向ける
世間のまなざしは想像以上に厳しくなっていたのかもしれません。

2015年をデザインで振り返る(2)東京五輪・パラリンピックのエンブレム問題(上)

こんにちは。中小企業診断士の山口達也です。

2020年東京オリンピック・パラリンピックのエンブレム問題は、
デザイン界の今年の最大の話題となりました。

書いていたら長くなりましたので2日に分けて記します。

今年の流行語にもなった「エンブレム」(emblem)は、
辞書を見ると標章や紋章という意味です。

よく使われるロゴ(logo)やシンボル(symbol)と、
ほぼ同じ意味で使われていると考えてよいでしょう。

7月24日に佐野研二郎氏のデザインによる
エンブレムが発表されましたが、
国内で大きな話題・批判を巻き起こし、
9月1日に佐野氏が撤回に追い込まれました。

佐野氏エンブレム.jpg

現在は新たなエンブレムの審査に入っています。

時系列で私が感じていたことを記します。

私が最初に佐野氏のエンブレムを見た感想は
「黒が強く、重くて地味だな。いまひとつ。」でした。

高い評価につながったアルファベットへの展開は
美しく感じませんでしたし、
TがTokyo、Team、Tomorrowを象徴している話は、
招致時のプレゼンテーションに比べて
薄っぺらいと感じました。

ただ、絶対に受け入れられない悪い作品とも思いませんでした。
私の好みはともかく、みんながよいならこんなものかなと。

似ていると指摘されたベルギーの劇場ロゴは、
佐野氏が模倣したデザインとは思いません。

それほど似ていませんし、デザインのつくり方も違うので、
裁判でもおそらく負けないと考えます。

一方で、ギンザ・グラフィック・ギャラリーで開催された
ヤン・チヒョルト展のロゴと、
修正前の佐野氏の応募した原案とは似ています。
佐野氏が影響を受けた、真似をした可能性は排除できないと思っています。

私の感想は以上です。

ここからはこの問題を通じて、
私たちが学ばねばならないことを考えます。

「類似=模倣」ではないと認識しましょう。

日本の著作権法は、創作したデザインが
他の人のデザインと偶然に同じであったとしても、
模倣していなければ著作権侵害とならないと解されています。

確かに、著作権侵害を争うケースでは、
デザインが極めて似ていると、そのデザインが
まったくの偶然で創作されたとは考えにくい
と裁判官が判断することもあります。

しかし、これはかなり慎重な判断が求められます。

今回の件では、インターネット上で似ているデザインを
探す行為が広く行われましたが、
似ている=パクリ、ではない原則を理解しましょう。

その一方で、デザイナーに創造性や独自性を期待する人が少なくない
ことも、デザイナーは知っておきたいものです。

明日はもっと大きな問題を考えます。

2015年をデザインで振り返る(1)新国立競技場の設計やり直し

おはようございます。中小企業診断士の山口達也です。

今年はデザイン業界に激震が走った年でした。

新国立競技場の設計やり直しと、
2020年東京オリンピック・パラリンピックの
エンブレムの白紙撤回、の2つの話題に触れます。

今日は新国立競技場の設計やり直しについてです。

新国立競技場の設計をめぐる経緯から確認します。

新国立競技場のデザインは、
東京オリンピックの開催決定前の2012年11月に、
基本構想国際デザイン・コンクールに応募された
46作品の中からザハ・ハディド氏のデザインに
決まりました。

新国立ザハハディド02.jpg

しかし、当初予算の1300億円に対し、
その後の見積もりはどんどん膨らみます。

2割規模を小さくしたり、
屋根の整備はオリンピック後に整備に変更したり、
8万人の観客席の一部を仮設としたりしながら、
費用を抑えようとしますが、
今年6月には2520億円となる見込みとなりました。

政府への批判が高まり、7月17日に安倍総理が
当初の計画を白紙にすると表明しました。

設計案の募集からやり直し、A案とB案の2案から
12月22日に建築家の隈研吾氏の設計案(A案)が
優先交渉権者として決定しました。

新たに決まったA案
新国立競技場a案.jpg

わずかな得点差で選ばれなかったB案
新国立競技場b案.jpg

ここまでが経緯です。

取り止めとなったデザインへの批判は、
「意匠や構造が適当ではない」と「費用が高すぎる」
の2つが主なものと思われます。

私は躍動感のある鋭い意匠に魅力を感じましたが、
神宮の環境になじむとは言いにくく、
街や森がこの大きな変化を受け入れるかどうかは
悩ましいところです。

また、国民の批判の多くは、
意匠や構造よりも費用面に向けられました。

批判のトーンは、ザハ案の決定時よりも、
見積もり価格が膨らんだことによって
上がっていきました。

発注を決定して、あとからコストアップは
どんどん受け入れるという公共事業のあり方が
厳しく問われたのでしょう。

物価や人件費の変動もありますから、
大規模プロジェクトの原価が当初の予定通り
いかないことは、ある程度許されると考えますが、

これまでの公共事業の中には
あえて正しく見積もりをしようとしない
不作為の罪があると思われるものも
少なくありませんでした。

例えば、東京オリンピック・パラリンピックの運営費も
当初の6倍、1.8兆円になる見込みだと、
マスコミ各社が先週末に一斉に報じています。

NHKはロンドン五輪では2.1兆円かかった、
と報じています。

そのような状況で、東京の運営費を
最初に約3千億円と見積もるほうが不自然です。

運営費の負担もこれから問題になるでしょう。

新国立競技場に話を戻します。

旧案の選定の失敗を踏まえ、
設計の見直しにおいては、
短い工期への実現性や
価格を重視して選ばれました。

再募集では、設計と施工会社が組んで
応募することが求められました。

A案は整備費が1489億円、
B案は整備費が1496億円、
と提案書にはそれぞれ記されていました。

ザハ案の見込みが2520億円になった一因に
キールアーチに765億円かかることが
報道されています。

報道の金額が正確でなかったとしても、
高額になった原因のひとつに
デザインがあることは間違いないです。

設計や建設業界の人の話を聞くと
いろいろ事情はあるようですが、

設計と施工を別に考えること、
費用の検討より挑戦的なデザインを重視したこと、
は国民の理解を
広く得るのが難しかったのかもしれません。

私は、政府や日本スポーツ振興センターの
仕事の進め方に最大の問題があったと考えますが、

費用を軽視したデザインは国民に受け入れられない
ことも再確認させられた一件だったと思います。

NHKの世論調査では、2520億円になる建設計画には
「あまり納得できない」34%、「まったく納得できない」47%で、
「納得できない」が81%でした。

もうひとつの話題、エンブレム白紙撤回は週明けに。

わびさびの龍安寺の石庭

おはようございます。中小企業診断士の山口達也です。
今日は龍安寺の石庭の話です。
世界文化遺産登録されています。

枯山水石庭01.jpg

龍安寺は1450年に建てられました。
枯山水の有名な石庭は1499年につくられたとされています。

東西25メートル、南北10メートルの
石庭の作者は不明で、石庭の狙いも不明です。

砂に15個の石が配置されているだけですが、
見る者によって、空や海、山、宇宙などの
想像をかきたてる究極の豊かな庭です。

わびの世界です。

雨の日に行きました。

広大な世界を小さく閉じた簡素な庭で
表現したことで、心が自らに向くような気がします。

諸行無常であったり、豊かさが問われたり
しているような気がします。

私は物心の本質に迫る庭だと受け止めました。

枯山水石庭03.jpg

設計もかなり練られた作庭です。

排水を考えたわずかな高低や、
錯覚で奥行きを感じさせるように壁にも工夫が
施されています。

詳しくは「石庭の謎」のページをご覧ください。
http://www.ryoanji.jp/smph/garden/index.html

菜種油を混ぜた土で造られた油土塀によって囲まれ、
配置された石には苔が生えています。

枯山水石庭02.jpg

時間が流れることによって変化した塀や石からは、
さびが感じられます。

龍安寺の石庭からは、
わびさびの美意識、世界観が味えます。

日本のブランド、デザインを考えるうえで、
理解しておくべき世界観です。

源光庵の「迷いの窓」と「悟りの窓」は最高のデザイン

おはようございます。中小企業診断士の山口達也です。
先日、京都の源光庵に行って来ました。

源光庵は、もともと1346年に臨済宗のお寺として
創建されましたが、
1694年に曹洞宗のお寺して再興されています。

本堂は曹洞宗のお寺となったときに建てられています。

本堂には、禅の教えが込められた
「迷いの窓」と「悟りの窓」があります。

迷いの窓と悟りの窓.jpg

右の角窓が「迷いの窓」です。

「迷いの窓」は4つの角に人間の生涯、
生老病死の四苦を表しているそうです。

迷いの窓.jpg

四苦八苦も含めて、
自らの思うようにならないことへの自らの心を
見つめるための窓です。

丸窓の「悟りの窓」は、円型に「禅と円通」の心、
円は大宇宙を表現しています。

悟りの窓.jpg

「悟りの窓」の前にじっと座っていると、
とても清らかな気持ちになれます。

無心になるもよし、宇宙を感じるもよし、
焦点を絞った庭の景色を見つめるのもよいです。

ひらめきや気づき、悟りの境地が
もたらされるかもしれません。

見事なデザインです。見事な芸術です。

論理付けた造形を良いデザインとして
ありがたがる傾向もありますが、

この窓は、そのような文脈、背景(コンテクスト)を
知らなくても、見る者の心を打つ窓だと思います。

感性と論理がともに優れているデザインこそ、
本当に優れたデザインだと思います。

源光庵は、京都の他の人気の観光地に比べると、
ずっと観光客は少なめでした。

たまたまでしょうが、外国人も見かけませんでした。

タクシーの運転手さんに聞いたところ、
JR東海のTVCMで最近は人気が出てきて、
紅葉の時期は混雑するそうです。

紅葉の眺めも美しいと思います。

しかし、自らの心を見つめるには
じっと静かに窓を眺められる、
空いている時期に行くのが私のお勧めです。

2014年をデザインで振り返る

おはようございます。中小企業診断士の山口達也です。
全国的に冬の嵐です。
横浜も寒いですが、大雪の地域よりは恵まれています。

デザインで2014年を振り返ります。
今年はロボットを取り上げます。

サイバーダインというベンチャー企業があります。

ロボットスーツ「HAL」を開発、レンタルしています。
今年3月26日に東証マザーズに上場しました。

身体の不自由な方や大きな力を出すことを
助けてくれるロボットです。

医療や介護など現場で使われ始めています。

力を出しやすくなるだけでなく、
うまく動かせたことを脳が学習するシステムになっています。

身体の一部となって助けてくれる製品は、
豊かな着想や、技術への知見、人間工学や見た目も
考慮した総合的で高度なデザイン力が求められます。

クボタの農業用アシストスーツ「ラクベスト」は、
腕を支えて、腕を上げたままの作業負担を軽減します。

椅子の肘かけのような役割を果たします。

腕を下ろしたいときには簡単に下ろせるよう、
単三電池で駆動する電磁弁で
腕を支持する部分の固定と解除をします。

モーターを使わず軽量化し、12万9600円と廉価です。

昨年秋から発売されたようですが、
今年、メディアに多く取り上げられました。

菊池製作所の介護ロボットも注目されました。
ものづくりメカトロ研究所や
マッスルスーツのwebページに詳しく載っています。

「マッスルスーツ」は、
圧縮空気やゴムチューブなどによる人工筋肉で
介護の負担を軽減します。
11月から本格的に発売されます。

力強そうなスーツですが、美しさやカッコよさ、
安全面では、デザインとして
いろいろ考えられるポイントがありそうです。

ソフトバンクの「Pepper」(ペッパー)
人の感情を認識するロボットです。

ソフトバンクが6月に新製品発表しました。
一般販売は来年の予定です。

こちらは力を貸してくれるのではなく、
表情や声から人の感情を認識して、
会話で楽しませてくれるようです。

インターネットに接続されていて、
データもクラウドで蓄積して学習もするそうです。
価格は198,000円。一般家庭でも買える金額です。

Pepperは日本人が考える、
いかにもロボットらしい素材感ながら、
人形のような顔やスタイルでもあります。

顔や体型が人間そっくりだとかえって気味が悪く、
ロボットらしさがあった方が
愛嬌を感じるのかもしれません。

このあたりの心理の研究も
デザインの進歩に求められそうです。

ロボットのどこかに人間に寄りそう部分や
人間らしさがある限り、ロボットの発展には
技術だけなく、優れたデザインも求められます。

人型のロボットは、日本が優位とされている分野です。
これからのロボットの進歩にも期待しましょう。

2013年をデザインで振り返る

こんばんは。中小企業診断士の山口達也です。
デザインで2013年を振り返ります。

話題はグーグルマップと3Dプリンターの2つです。

グーグルマップが、
グッドデザイン大賞(内閣総理大臣賞)とならず、
グローバルデザイン2013(日本デザイン振興会会長賞)に
なりました。

審査員や来場者投票で最も評価を受けたのですが、
政府が内閣総理大臣賞の授与を拒否をしたため、
該当なしとなり、急きょ新設した賞が授与されました。

政府が拒否した理由は明らかになっていませんが、
グーグルマップの利便性や見やすさ、
操作性は優れていると私は思います。

日本全体に与えた影響度も
他のデザインより大きいでしょう。

グーグルマップは従来からありましたが、
スマートフォン(スマホ)向けの
モバイルアプリが今年の受賞対象です。

スマホアプリは、端末の大きさや文字入力などで
制約がある一方、通信やセンサー技術などの
活用可能性は高く、デザイン性が特に求められます。

今後もプロダクトデザイン、グラフィックデザイン、
webデザイン、ライフスタイルデザインなどが融合された
新たなデザインが生まれていくでしょう。

3Dプリンターも今年は話題になりました。

3Dプリンターそのものは以前からあったのですが、
価格が数万円のものが発売されるなど
かなり安くなり、身近になってきました。

ただ、3Dプリンターに入力するデータを作るのが難しく、
一般の生活者が使いこなすところまでは
まだなっていないと思います。

しかし、小ロットのものづくりや、
モックアップ制作に利用しやすくなりました。

今年の話題となったデータサイエンティストと同様、
設計エンジニアの需要も近い将来高まると考えます。

来年はどんなデザインが出てくるでしょうか。
楽しみですね。