「ジュリスト」2017年4月号特集はブランド戦略と商標

おはようございます。中小企業診断士の山口達也です。

今日は雑誌「ジュリスト」2017年4月号のご紹介です。
特集は「ブランド戦略と商標の活用」です。

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ジュリストは法律の専門雑誌です。
弁護士や企業の法務部などが読んでいます。

4月号の特集では以下のようなテーマの記事がありました。

・色彩や音などの新しい商標の登録状況
・商標的使用の論考
・アンブッシュマーケティングの現状と実務上の対策
・地域ブランド戦略と地域団体商標、地理的表示保護制度(GI)
・税関の水際取締制度の活用
・中国における模倣品対策の実務

私は、税関の取締制度や
中国の模倣品取締りなどの実務に関する情報を
特に関心を持って読みました。

専門誌ですので、法律の基礎的な知識が求められますが、
ご興味がある人は読んでみてはいかがでしょうか。

専門雑誌はインターネットにはない情報が
気軽に入手できるので好きです。

イノベーションと企業家精神

おはようございます。中小企業診断士の山口達也です。
横浜も昨日、梅雨明けしました。暑くなってきました。
さて、今日は書籍のご紹介です。

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イノベーションと企業家精神
P.F.ドラッカー、(翻訳)上田 淳生、 ダイヤモンド社

書店に行くと、「もしドラ」がベストセラーになった
岩崎夏海さんの「もし高校野球の女子マネージャーが
ドラッカーの『イノベーションと企業家精神』を読んだら」
が売られていて、それをきっかけに
この本も近頃、注目されているようです。

私も同書をあらためて読み返しました。

同書はイノベーションの起こし方と
イノベーションを市場で成功させるための方法を
著者の鋭い洞察や経験などからまとめた本です。

大きく3部に分かれています。

第1部 イノベーションの方法
イノベーションの機会をどこに見出すかについて述べています。

第2部 企業家精神
イノベーションを起こす組織と企業家の役割を述べています。

第3部 企業家戦略
イノベーションを市場で成功させるための戦略を述べています。

第1部に記されている「イノベーションのための7つの機会」が
有名ですが、私は第2部の企業家精神も好きです。
少しご紹介します。

第13章の既存企業における企業家精神では、
組織の規模の大きさそのものは、イノベーションや
企業家精神の障害とはならないと主張しています。

最も企業家精神に乏しく
最もイノベーションの体質に欠けているのは、
むしろ小さな組織である、とさえ言います。

私はドキっとさせられました。

イノベーションを起こす大企業の例として、
ジョンソン&ジョンソンや3M(スリーエム)など
を挙げています。

イノベーションの障害となるのは、
官僚的な体質や煩雑な手続き、自己満足などではなく、
既存事業の課題対応に力を注いでしまうことだと言います。

既存事業に目が向くので、
新しく幼い事業にうまく注力できなくなるのです。

だからこそ、意識的な努力が必要であり、
学ぶ努力が必要であると主張し、

変化を脅威でなく機会とみなす組織をつくることや、
イノベーションの評価、組織の人事、
企業家精神にとってのタブーなどを述べています。

日本経済に成長戦略やイノベーションが
求められるのであれば、多くの人が読むべき本でしょう。

300ページ以上、濃い内容が詰まっています。

ただ、ドラッカーの本は少し難しいので、
同書のエッセンス版や
「もしイノ」から触れるのも良いと思います。

日経デザイン「中小企業にデザインの力を!」

おはようございます。中小企業診断士の山口達也です。
今日は日経デザイン7月号についてです。
特集は「中小企業にデザインの力を!」です。

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デザインに注力している中小企業が取り上げられています。

それぞれの企業の取り組みは異なり、
うまくいったポイントもひとつに
まとめられているわけではありません。

事例に関心のある中小企業には、ぴったりの特集です。

いろいろな気付きや感想があると思いますが、
私は外部デザイナーの活用の難しさを感じました。

次のような事例が掲載されています。

外部のデザイナーに依頼したことがあるが、
商品への思いが十分に表現できていないと感じて、
社長自らIllustratorやPhotoshopのソフトの使い方を
習得してパッケージデザインをした食品製造業。

過去にラベルをデザイナーに依頼したことが
数回あったが、いずれも想像の範囲内だった。
別のデザイナーとの出会いから
想像を超えたデザインが生まれた食品製造業。

CI(コーポレートアイデンティティ)や
ブランド戦略を推進するなかで、
インハウスデザイナーを採用して
デザイン部門を立ち上げ、広報に力をいれる製造業。

単にデザイナーに依頼すればうまくいくほど
簡単ではないと、あらためて感じます。

妥協なきデザインへの思いを中小企業が持って、
外部のデザイナーを何人も探したり、
自らデザイン技術を学んだりしています。

また、デザイナーの「作品」にならないために、
どの販路にどれくらい売るかという
提案ができるプロダクトデザイナーが
求められていることも感じました。

6月号はデザインの価格に関する特集でしたが、
7月号を読むと、応え切れていないニーズが
すこし見えるような気がしました。

日経デザイン「デザインの価格、デザイナーの価値」

おはようございます。中小企業診断士の山口達也です。

今日は日経デザイン6月号についてです。
特集は「デザインの価格、デザイナーの価値」です。
(表紙には、デザインの「値段」と書いてあるのですが、
本編やwebには「価格」と書いています。)

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受発注サイトやクラウドソーシングで、
デザインの価格比較が容易になり、
デザインの低価格競争が進んでいます。

私から見ても、採算が心配になるくらいの価格も
見られます。

紙を対象としたグラフィックデザインの
webへの展開もよく行われるようになりました。

6月号では、デザイン事務所が進める
新たな価格メニュー体系の事例を紹介しています。

成果報酬型や、出資して配当を得る例が書かれています。

デザイナーに向けて書かれた内容ですが、
発注する側の中小企業も役立ちます。

誌面には、デザイナーが価格が安くても
引き受けたいと話す案件の例もありました。

こうしたポイントを知っていれば、
資金の乏しい中小企業でも頼み方次第で、
引き受けてくれるかもしれません。

発注者にとっては、
価格が安いに越したことはありませんが、
成果との見合いを考えることがもっと大切です。

コンピュータやインターネットによって、
グラフィックデザインは
一般の方でもやりやすくなりました。

器用な作業ができる技能の価値は相対的に下がりましたし、
インターネットで、参考となる美しい配色やレイアウトも
簡単に探せる時代です。

デザイナーに依頼するときは、
いままでのデザインの実績を見て、
人間性を見て選びましょう。

ちなみに私は、スキルより
デザイナーの人間性を重視しています。

打算的過ぎる人や自分のデザインに酔う人、
今までのデザインを新しく変えたがる
デザイナーも少なくないので注意しています。

依頼する側も、価格以外の点もしっかり見て、
発注できるようになりたいものです。

コーポレート・アイデンティティ戦略 デザインが企業経営を変える

おはようございます。中小企業診断士の山口達也です。
先週に続いて名著をご紹介します。

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コーポレート・アイデンティティ戦略―デザインが企業経営を変える
中西 元男、誠文堂新光社

著者が取り組んできた仕事の回想録の趣きです。

しかし、コーポレート・アイデンティティ(CI)の構築が
どうあるべきか、数十年にわたる多くの実績を
もとに語っており、言葉にはかなりの重みがあります。

大企業での取り組みが多いのですが、
中小企業の実例もあります。

これらの取り組みで、
数十年前に作成されたロゴは力強く、
いまだにまったく古さを感じさせません。

デザインコンセプトがよく、
デザインの細部の調整まで丁寧にやってきた結果だと思います。

優れたCIによって、
企業業績を劇的に改善させた実例もあります。

CIによる業績改善が可能であることを
実証した記録として本書は貴重です。

社会科学の研究論文ではないので、
CI導入と業績の相関や因果関係を
定量的に示したわけではありませんが、
CIの第一人者が取り組んできた実績と証言から
学べることは多いです。

何度も読み返す価値のある一冊です。

戦略的ブランド・マネジメント第3版

おはようございます。中小企業診断士の山口達也です。
書籍のご紹介です。

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戦略的ブランド・マネジメント 第3版

ケビン・レーン・ケラー、東急エージェンシー

私がブランド論の教科書で
一番優れていると思うのが本書です。

本書の良いところは、
ブランド論を偏りなく網羅的に、
体系的にまとめたところにあります。

ブランド戦略に唯一の正解はなく、
世界中の企業が自社にあった
ブランド戦略に試行錯誤して取り組んでいます。

業種や時代によって変わるところもあります。

また、ブランドに関するさまざまな調査や
研究結果もたくさんあります。

著者は、それらの多くの企業の実務や研究を
もとにしながら、
体系的なブランド論としてまとめています。

800ページを超える大著です。

ビジネススクールの教科書に使われています。

学生や研究者、コンサルタント向けですが、
企業の管理者にも役立ちます。

がんばって通読したほうが好ましいのですが、
中小企業なら、自社の課題に関わるところだけを読む、
辞書のような使い方も良いと思います。

顧客の心に何を残せているかに焦点を当てた
「顧客ベースのブランド・エクイティ」(ブランド資産)や、
「ブランド知識」という概念を学べます。

ブランド構築や、長期的な管理、
グローバルなマーケティング活動とブランドの関係などを
現在のブランド論がどのように考えているかが
この一冊で理解できます。

値下げしたくない会社はエーワン精密に学ぼう

おはようございます。中小企業診断士の山口達也です。

今日はエーワン精密の創業者である梅原勝彦さんの
本を3冊ご紹介します。

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写真左から
経常利益率35%超を37年続ける 町工場強さの理由
梅原勝彦、日本実業出版社
日本でいちばんの町工場 エーワン精密の儲け続けるしくみ
梅原勝彦、日本実業出版社
「速さ」で稼ぐリーダー47のコツ
梅原勝彦、日経BP社

町工場強さの理由と
エーワン精密の儲け続けるしくみは
自らの生い立ちやエーワン精密の経営の特徴が記されています。

「速さ」で稼ぐリーダー47のコツ
は前述の2冊より仕事術や経営哲学が多めです。

エーワン精密は、徹底した短納期対応を可能にする
生産体制の強みがよく知られています。

毎年のように値引きを要請される町工場の世界にあって、
売値を維持し、材料費や給与の増加を
コストダウンで吸収して高利益率を長年続けた
経営手腕は素晴らしいです。

仕事で成果を出すために、
かなり合理的に考え抜かれています。

値引きしたくない企業はぜひ参考にしてください。

管理を必要最小限に抑えて、
短いリードタイム、低コスト生産を実現しています。

人材育成にも優れているのですが、
こちらもあまり管理しているイメージはありません。

どちらかといえば経営者や上司が自らの姿を見せる、
背中を見せて教える、というような雰囲気も感じました。

生産管理ではQCD、
Quality(品質)、Cost(費用)、Delivery(納期)
を重視するのですが、Dを徹底的に磨いて
競争優位を築いています。

もちろんQとCも優れているので高収益になっています。
低コスト生産=安売り、ではありません。
低コストだから高利益率が実現できるのです。

お客様との関係を築く、でんかのヤマグチ

おはようございます。中小企業診断士の山口達也です。

今日は昭島市商工会で「値上げ」をテーマに講演します。

本日のブログは、講演でもお話しする、
東京都町田市の電器販売店「でんかのヤマグチ」の話題です。
山口社長の本を3冊ご紹介します。

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写真左から
なぜこの店では、テレビが2倍の値段でも売れるのか?
山口 勉、日経BP社
でんかのヤマグチさんが「安売り」をやめたワケ
山口 勉、宝島社
よそより10万円高くてもお客さんが喜んで買う「町の電器屋さん」が大切にしていること
山口 勉、すばる舎

でんかのヤマグチの経営のエッセンスは、
いずれの書籍でもつかめます。

家電の小売業は、他の店でもまったく同じ製品が買えるため、
価格で競うことになりやすい業種です。

ヤマグチは「トンデ行きます」と宣言し、
地域のお客様に密着した徹底的なサービス、
御用聞きに集中して、安定した経営を実現しています。

裏サービスと呼ばれる家電販売とは関係ない
ちょっとした手助けも無料で引き受け、
遠くの親戚よりも近くのヤマグチ、
という関係を築いています。

御用聞きや顧客サービスを徹底して行うため、
顧客を絞っています。

また、仕入商品をパナソニックに絞り、
価格は安くしない、という大手家電量販店の逆を行く
経営戦略で成功しています。

その戦略を実行するための
組織運営、人材活用、おもてなしの心づかいは
本当に見事です。

ヤマグチの戦略を真似するのはやさしくないのでしょう。

店舗は駅から離れたところにあります。

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一般的な街の電器屋より店舗面積は大きめで、
リフォームやオール電化のコーナーや
卵や飲料などの飲食品も売っていました。

買物に来ているご夫婦様が
「ヤマグチさんは大好きなの」
と店員に話していました。

本当に愛されているお店です。

安くしないと売れないと決め付けないことです。
競争軸を変えればチャンスがあることを示す会社です。

ウラからのぞけばオモテが見える

おはようございます。中小企業診断士の山口達也です。
書籍のご紹介です。

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ウラからのぞけばオモテが見える
佐藤オオキ/nendo・10の思考法と行動術
佐藤オオキ、川上典李子、日経BP社

日本を代表する若手デザイナーの
佐藤オオキさんの仕事を紹介した一冊です。

佐藤オオキさんのデザイン事務所はnendoといいます。

第2章のnendoの行動術は、
デザイン事務所経営についても書かれていて、
とても興味深く読みました。

第1章の思考法は川上さんが書かれているようですが、
思考ですから観念的な内容ですが、
それにもかかわらず、わかりやすくまとめています。

「面」で考える、という項目がありますが、
私はとても共感できました。好きですね。

その他の項目も佐藤さんのオリジナリティが感じられます。

文化に対する造詣も含め、かなり博識な方だと思います。
デザインの引き出しの多さには驚かされます。

クライアントや消費者をよく観察していますし、
論理や知識の裏づけがありながら、
どこか遊び心や柔らかさがあるデザインが
人気の秘密なのかもしれません。

思考法や行動術は、
問題解決をするデザインを支えるものです。

新しいことを考えたい人にはお勧めの一冊です。

今年、ダイヤモンド社から刊行された
「問題解決ラボ―『あったらいいな』をかたちにする『ひらめき』の技術」
も買ってみたいと思います。

センスは知識からはじまる

おはようございます。中小企業診断士の山口達也です。
今日は書籍のご紹介です。

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センスは知識からはじまる
水野学、朝日新聞出版

水野さんは、NTTドコモ「iD」や、
くまモンのデザインを手掛けています。

センスがある人とは、
どのような人かを語った一冊です。

水野さんは次のようにセンスを定義します。

「センスのよさ」とは、
数値化できない事象のよし悪しを判断し、
最適化する能力である。

そして生まれつき備わっている感覚、能力
のようなものではないと主張しています。

美的センスを中心に書かれています。

彼の主張は、センスとは知識の集積から予測、
判断するものだ、ということだと思われます。

センスを磨くために、具体的には
王道や定番を見る、流行を学ぶことなどを
勧めています。

名著「アイデアのつくり方」「思考の整理学」と
考え方は近いところがあります。

また、デザインにおいて、自分の好き嫌いから
離れるべきという主張は私も賛成です。

デザインプロセスを学ぶのにも有効な一冊です。

超感性経営 ソニー伝説のストラテジストが授けるデザインマネジメント・メソッド25

おはようございます。中小企業診断士の山口達也です。

先週はソニーブランドに関する記事を書きました。
今日は、かつてソニーのデザインセンター長だった
渡辺英夫さんの本のご紹介です。

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超感性経営
ソニー伝説のストラテジストが授けるデザインマネジメント・メソッド25
渡辺英夫、「超感性経営」編集委員会(共著)、ラトルズ


私が持っている本を撮影した上の写真では
背表紙の方を中心にヤケた跡があります。
実際の地の色はきれいな青一色です。

この本は2009年に出版された本です。

たくさん売れた感じではなさそうですが、
私は何度も読み返しています。隠れた名著です。

渡辺英夫さんは黒木靖夫さんとともに
ソニーのデザインの中心的な存在だったそうです。

渡辺さんは自分のデザインマネジメント論を
まとめようとしていたところで、
病に倒れて亡くなってしまいました。

渡辺さんと親交のあった人たちが、その遺志をついで、
本人から直接聞いた話、出版メモや大学での講義録などを
まとめた一冊です。

ソニーでどのようにデザインマネジメントと
ブランドマネジメントを行ってきたか、
デザイナーはどうあるべきか、イノベーションの起こし方、
ビジネスとしてのデザインの追求、などが
エピソードを混ぜながら語られています。

論理と感性、仮説推論(アブダクション)、
暗黙知を経営に生かすとはどういうことか、
実例を示したわかりやすい一冊です。

ソニーの人のやらないことをやる、つねに一歩先んずるという理念を
守っていくブランド、デザインマネジメントに
関する実話をぜひ楽しんでください。

内容はとても深いですが、
ひとつひとつの話はエッセンスを
短く区切って読みやすく、わかりやすくまとめられています。

同時に、井深大さん、盛田昭夫さん、大賀典雄さんが
名経営者であることも、あらためてよくわかる一冊です。 

無印良品は、仕組みが9割

おはようございます。中小企業診断士の山口達也です。
5月の連休はどのように過ごしますか。
稼ぎ時の企業はしっかりがんばりましょう!

さて、今日は書籍のご紹介です。

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「無印良品は、仕組みが9割」
松井忠三、角川書店

良品計画の会長が書いた本です。

無印良品は、ファンも多くデザインの評価も高い企業です。

マスコミやインターネット、書籍などでは、
商品開発やデザインに焦点が当たっていて、
無印良品のデザインの良さが、
良品計画の業績の良さにつながっていると
まとめられている文章もよく見かけます。

私もそれらの意見に賛成する部分も多いのですが、
デザインが良ければ経営がうまくいく、
というほど経営は単純ではないと思うことも多いです。

この本を読むと、「MUJIGRAM(ムジグラム)」を
はじめとする業務マニュアルの導入や、
組織での仕事の進め方の改善が、
良品計画の企業再建に大きく影響したことがわかります。

大きな会社のトップマネジメントが語る
ビジネスプロセス論は面白く、
実際に本の売れ行きも好調のようです。

業務改善や現場で働く人の声を集める仕組みが
詰まっています。

デザインの肝を守っていくデザインマネジメントや、
デザイン改善に生かす仕組みとしても参考になる
経営の取り組みです。

優れたマネジメントが良いデザイン、
良いブランドを作ることを示す好例です。

見た目のデザインをパッと変えるのと違い、
業務改善は長い時間を掛けて忍耐強く取り組んで、
じわじわ効果が出るので、トップの胆力も求められます。

ブランド論

おはようございます。中小企業診断士の山口達也です。
今日は書籍のご紹介です。

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ブランド論
デービッド・アーカー、ダイヤモンド社

アーカー教授の著書はいくつかご紹介してきましたが、
本書は昨年9月に発売された一冊です

これまでのブランド論の集大成です。

特に新しい主張があるという印象は受けませんでしたが、
ブランディング、ブランドマネジメントに関する
基本原則を20項目にまとめています。

本書では、これまでブランド・アイデンティティ、
と呼んでいたものをブランド・ビジョンと呼び換えています。

どうもCI(コーポレートアイデンティティ)と
イメージが混同されることがあるようで、
誤解を減らすため呼び方を変えました。

内容は変わっておらず、
お客様にブランドをどう思われたいかや、
そのブランド(自分たち)が目指すもの、
を示すと思っていただいてよいです。

これまでの本に比べると学術的な要素が少なめで、
コンパクトにエッセンスをまとめています。

ブランドマネージャーをはじめとした実務家にとっては、
課題に直面したときに、その項目だけを読む使い方もできます。

(しかし、まずは第4章までは通読することをお薦めします。)

事業戦略、イノベーション、組織などとブランドの関わり方や、
ブランド・ポートフォリオをどうするかなど、
幅広くポイントは網羅されていますので、
何冊も分厚い本を読みこなす苦労はしなくてもよくなりました。

多くの企業の実情を多く見てきたアーカー教授らしく、
世界市場に展開する大企業を中心にさまざまな業種に適応する、
柔軟性のある実務的なブランド論です。

きちんと勉強したい人向けの入門編として使える一冊です。

デザインの教科書

おはようございます。中小企業診断士の山口達也です。
今日は書籍のご紹介です。

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デザインの教科書
柏木 博、講談社現代新書

柏木さんは日本のデザイン評論の第一人者です。
本書はデザインの意味やデザインの歴史について、
たっぷり語った一冊です。

デザイン技法の解説書、ハウツー本ではありません。
デザインに関わる人に向けた教養書の趣きがあります。

章の構成は次のようになっています。

第1章 デザインって何?
第2章 20世紀はどのようなデザインを生んだか
第3章 心地良さについて
第4章 シリアスな生活環境のためのデザイン
第5章 デザインによる環境問題への処方
第6章 デザインを決める具体的要素
第7章 趣味とデザイン
第8章 デザインの百科事典─デザイン・ミュージアムの展示

私の日々の仕事の中では、目の前の商品や販促物を
どうデザインしたら企業の業績が良くなるかと
考えることに意識が行きがちなのですが、

経営にこだわらずにデザイン総論を学べたことは、
広い視野をもつことにつながり、
いつか何かの役に立つような気がします。

手のとどかない高さにあるものをとるために、
椅子の上に乗ることもデザイン。

小川を渡るのに、体を濡らさないように、
飛び石の上を選んで歩くのもデザイン。

そうした視点を与えられると、
人の生活のあらゆる行為がデザインだと考えることができます。

自らのデザインが
文化や社会にどう影響を与えるのかを考えながら
デザインすることも大切だとあらためて認識しました。

やさしい内容ではありませんが、
デザインの可能性をまとめた一冊とも言えます。

小さな会社を強くするブランド作りの教科書

おはようございます。中小企業診断士の山口達也です。
書籍のご紹介です。

小さな会社を強くするブランド作りの教科書
岩崎邦彦、日本経済新聞社

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著者は、静岡県立大学の教授ですが、
静岡県でつくられる高糖度トマト「アメーラ」
を生産するサンファーマーズとともに、
社外ブレーンとしてアメーラのブランドづくりに
取り組んできました。

本書の特徴はブランド論で語られる内容について、
全国の消費者1000人、東京都の消費者1000人、
全国の中小企業経営者1000人を対象に調査し、
統計的に検証した点です。

さまざまな分析から、強いブランドをつくるために
決定的に重要な次の二つの要因を導き出しています。

・明確なコンセプトがあり、消費者の心の中に明快なイメージが形成されている
・売り手のセンスやデザイン力などによって、消費者の感性に訴えている

単に機能や品質が優れているだけでは、
強いブランドにならないとも主張しています。

また、強いブランドに見られる特徴も抽出しています。
あまりブログに書くと良くないので、
その特徴が気になる方は同書をご覧ください。

ブランド論ではおなじみのブランド・アイデンティティの
設定に求められる条件や、
プロモーション、訴求方法について著者の主張もあります。

著者は、実際にブランドづくりを手掛けたうえで、
さまざまな人の意見、考えを統計的にまとめています。

実践や個人の感覚だけに偏らず、
理論としてまとめている点は同書の一番の良さです。

ところどころの説明は、わかりやすさ優先で、
全ての説明が論理的・実証的ではないのですが、

語りかける文体で、経営者をやる気にさせる
本の構成は著者らしいですね。

同書は一般の経営者に向けて書かれたものですが、
ブランド論の実証に関心のある方にもお薦めします。

福島屋 毎日通いたくなるスーパーの秘密

おはようございます。中小企業診断士の山口達也です。
今週も書籍のご紹介です。

福島屋

福島屋 毎日通いたくなるスーパーの秘密
福島徹、日本実業出版社

ブランド経営の神髄と言える内容です。

愚直にお客様によい商品を届ける努力を
続けるスーパーマーケットの経営です。

戦略という言葉は似合いません。
自社の拡大や他社との競争の意識はほとんど感じられません。

「お客様に本当に美味しいもの、安全なものを届けること」
という理念、ポリシーを体現した経営です。

その努力がすばらしく、
他社が簡単に真似できないので、個性が際立っています。

人を育て、お客様とコミュニケーションをとり、
仕入先を支援までしてきたことがわかります。

私が同書をご紹介したのは、
書かれている手法を伝えたいからではありません。

理念を掲げ、理念の実現を真剣に考え、
取り組んできた経営姿勢をご紹介したかったのです。

「お客様に本当に美味しいもの、安全なものを届けること」
というポリシーがお客様に伝わり、
福島屋が売っているから買おうというお客様は多いです。

福島屋ほど信頼・信用されている企業は、
めったにありません。

福島屋は大手スーパーほど知名度はありませんが、
そのブランドロイヤリティは絶大です。

お客様、仕入先から大きな信頼を寄せられる考え方、
行動は、中小企業経営の手本になります。

事業意欲がわく一冊です。

デザイナーのための著作権ガイド

おはようございます。中小企業診断士の山口達也です。
今日は書籍のご紹介です。

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デザイナーのための著作権ガイド
赤田繁夫、上野善弘、大井法子、久野寧子 共著、
パイインターナショナル

私は専門学校日本デザイナー学院で
著作権について授業を行っています。

同書はデザインに関する著作権に特化して、
わかりやすく解説しており気に入っています。

生徒に紹介している一冊です。

レベルも初歩から判例紹介など、
かなり突っ込んだところまで書いてあり、
著作権に詳しくないデザイナーの方から
弁理士などのプロまで幅広い層に喜ばれる一冊です。

法律書の堅苦しい雰囲気はできるだけ排除されています。
レイアウトが読みやすく、カラーページも多いです。

以下のような使い方ができます。

・豊富なQ&Aを辞書的に使う。
・契約書のひな型を参考にする。
・全編読んでしっかりデザイン分野の著作権を学ぶ。

なお、著作権全般の基礎を学ぶには、
著作権情報センターの「はじめての著作権講座」が良いです。
(pdfで無料で見られます)
http://www.cric.or.jp/publication/pamphlet/index.html

ちなみに、JAGDAの「グラフィックデザイナーの著作権Q&A」
もよい本でしたが現在は入手困難です。

「デザイナーのための著作権ガイド」は
5800円+税、と価格は高めですが、
無用なトラブルを回避できると思えば安いものです。

業界関係者はしっかり学びましょう。

発想する会社!

こんにちは。中小企業診断士の山口達也です。
今日は書籍のご紹介です。

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発想する会社!
世界最高のデザイン・ファームIDEOに学ぶイノベーションの技法
トム・ケリー 早川書房

今さら紹介するのも、はばかられるくらい、
デザイン思考を学ぶのに欠かせない基本の一冊です。
2002年の出版です。

アメリカのデザインコンサルティング会社である
IDEO(アイディオ)のデザインプロセスを
ゼネラルマネジャーのトム・ケリーが語っています。

先日、日本経済新聞の電子版でも記事になりました。

「日本人よ、創造力を解き放て」
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK0903H_Z00C14A4000000/
(日経電子版の会員でないと全文を読めません)

IDEOのデザインプロセスは次の5段階を経ます。
理解→観察→視覚化→評価とブラッシュアップ→実現

このデザインプロセスは、
物のデザイン以外の課題解決にも応用されており、
この10年あまり、デザイン思考(Design Thinking)と呼ばれ
注目されてきました。

デザイン思考では、消費者へのインタビューより、
現場の観察を重視しています。

観察の項にある小見出しには以下のような言葉があります。

・左利きの人の身になる
・無茶な使い方をするユーザーにも対応する
・ルールを破る人びとを見つける

これらにイノベーションを見つけるヒントがあるのです。

そして見つけた事象の問題解決に
ブレーンストーミングが使われています。

「IDEOではブレーンストーミングはほとんど宗教みたいなもので、
ほぼ毎日、まるで礼拝のように行なっている。」

と書かれていますから、その実践度は世界最高のレベルでしょう。

有効なブレーンストーミングの進め方も書かれています。
このブレーンストーミングの項だけでも
買う価値のあると思います。

同書には職場風景が多く語られており、
チャレンジングでチームワーク重視、
主体的でありながら自由を尊重する文化が感じられます。

ページ数は多めで、理論的にまとめた感じではないので、
ちょっと冗長さを感じるところもあるのですが、
生の臨場感、現場の雰囲気が残ったIDEOらしい一冊です。

優れたアイデアがほしい企業や、
商品開発する方、クリエイティビティを追求したい方に
お薦めの本です。

手法をそのまま真似するだけでも、
いろいろとアイデアが生まれるはずです。

日経デザイン「経営をトガらせるデザイン活用術」

おはようございます。中小企業診断士の山口達也です。
横浜も昨日、桜が満開になりました。

昨日で「笑っていいとも」が終わりました。
私が人生で一番見たバラエティ番組だと思います。

32年間、月曜から金曜日まで
毎日笑いを届け続けたことは偉業ですね。
いつも大いに楽しませていただきました。
感謝しております。

さて、今日は日経デザイン3月号の話題です。
特集は「経営をトガらせるデザイン活用術」でした。

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中小企業の事例が特に多い特集で、
興味深く読みました。
いくつかご紹介します。

ハリオの商品開発システムは
「FMS」(ファザー&マザーシステム)と呼んでいる
仕組みで、Fatherである営業とMotherである商品企画者が
協力してSonである製品を世に送り出していくものです。

営業、デザイナーの担当を一人ずつ決め、
両者が責任をもって商品を世に送り出しています。

このシステムは20年間運用しているそうですから、
かなり実践的なノウハウです。

リサーチも社内デザイナーが行い、
デザイナーがパッケージやコピーまで手掛けるそうです。

意見の対立があっても、その克服する策を一緒に考えることが
商品開発の失敗確率を減らすことができるのだと思います。

担当が一人ずつであることも良いと思います。
人数が多すぎるとエッジの効いた商品が作りにくくなりそうです。

「かみの工作所」の福永紙工の
デザイナーの活用システムも初期費用を抑えたい
中小企業にはとても参考になるはずです。

中堅中小はDesignで輝くの記事では、
「営業できる社内デザイナーを育て 下請けから提案型企業へ脱皮」
という題名で、樹脂製品の成形メーカー、本多プラスを
紹介していました。

デザイナーに実際に工場での製造現場に配属し、
その後、営業をさせることで、提案型企業として
業績を伸ばしています。

特集は、経営者がデザインを理解、活用し、
またデザイナーも経営リテラシーを上げることが
成功率を上げるためには必要というまとめでした。

私も同感です。
経営とデザイン、両方を良く学ぶことがやはり重要です。

知識デザイン企業

おはようございます。中小企業診断士の山口達也です。
今日は少し難しい本のご紹介です。

知識デザイン企業.jpg

知識デザイン企業
紺野登 日本経済新聞社

デザイン経営に関する一冊です。

著者は「モノづくり強化論」の落とし穴として、
日本企業の強みとされる品質が優れている点だけでは
勝ち抜くことは難しいと述べています。

そして、理念を掲げ、新たな経験を社会にもたらす、
モノとコトを同時に創造する「アート・カンパニー」が
求められる、とまえがきに記しています。

私は第5章の知識デザインの「方法論」において、
IDEOのデザインに特徴とされる体験的認知によるデザインと、
アップルのデザインに象徴される内省的認知によるデザイン、
の2軸の組み合わせが提示されている点が
面白いと感じています。

その前段にあたるp.164には、
ドナルド・A・ノーマンが提唱した
「体験的認知」と「内省的認知」を紹介し、
知識デザインには両方が必要だとしています。

p.166には次のように記されています。
デザインにおいても、
体験型の、現場に踏み入ってスピーディーに
プロトタイピングを行うことが重要であると同時に、
概念的な本質、本来的な真摯な追求を重ねることも
また極めて重要である。

知識デザインには、革新的な部分を
全体に包含していくような調和総合が求められ、
調和総合には美的判断力が重要であると著者は主張します。

単にイノベーションの重要性を強調しているだけはありません。

理念を掲げ、審美性をもち、
社会・環境とのつながりを考える中で、
真摯であることの重要性を訴えています。

同書は手っ取り早いノウハウ本ではなく、
概念の解説が中心です。

しかし、経営理念を考える時や商品・サービス開発に
参考になるでしょう。

落ち着いた環境でゆっくり読みたいです。

最後に私が面白いと思った箇所をもうひとつご紹介します。

p.70には、ipodの背面をピカピカに磨いた
燕市の東陽理化学研究所を取りあげ、
社長の本合邦彦氏のコメントを引用しています。
(社長が)指紋がつく問題点を伝えたら、デザイナーは不思議そうに答えた。
「汚れたら、ふけばいいじゃないか」
だから、ipodには眼鏡拭きのような布が同封されている。
こういう発想は日本にはない。勉強になった。

常識や従来の延長線上に凝り固まっていませんか?
自戒も込めて。真摯に新たな知を創る努力を続けましょう。