発想する会社!

こんにちは。中小企業診断士の山口達也です。
今日は書籍のご紹介です。

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発想する会社!
世界最高のデザイン・ファームIDEOに学ぶイノベーションの技法
トム・ケリー 早川書房

今さら紹介するのも、はばかられるくらい、
デザイン思考を学ぶのに欠かせない基本の一冊です。
2002年の出版です。

アメリカのデザインコンサルティング会社である
IDEO(アイディオ)のデザインプロセスを
ゼネラルマネジャーのトム・ケリーが語っています。

先日、日本経済新聞の電子版でも記事になりました。

「日本人よ、創造力を解き放て」
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK0903H_Z00C14A4000000/
(日経電子版の会員でないと全文を読めません)

IDEOのデザインプロセスは次の5段階を経ます。
理解→観察→視覚化→評価とブラッシュアップ→実現

このデザインプロセスは、
物のデザイン以外の課題解決にも応用されており、
この10年あまり、デザイン思考(Design Thinking)と呼ばれ
注目されてきました。

デザイン思考では、消費者へのインタビューより、
現場の観察を重視しています。

観察の項にある小見出しには以下のような言葉があります。

・左利きの人の身になる
・無茶な使い方をするユーザーにも対応する
・ルールを破る人びとを見つける

これらにイノベーションを見つけるヒントがあるのです。

そして見つけた事象の問題解決に
ブレーンストーミングが使われています。

「IDEOではブレーンストーミングはほとんど宗教みたいなもので、
ほぼ毎日、まるで礼拝のように行なっている。」

と書かれていますから、その実践度は世界最高のレベルでしょう。

有効なブレーンストーミングの進め方も書かれています。
このブレーンストーミングの項だけでも
買う価値のあると思います。

同書には職場風景が多く語られており、
チャレンジングでチームワーク重視、
主体的でありながら自由を尊重する文化が感じられます。

ページ数は多めで、理論的にまとめた感じではないので、
ちょっと冗長さを感じるところもあるのですが、
生の臨場感、現場の雰囲気が残ったIDEOらしい一冊です。

優れたアイデアがほしい企業や、
商品開発する方、クリエイティビティを追求したい方に
お薦めの本です。

手法をそのまま真似するだけでも、
いろいろとアイデアが生まれるはずです。

日経デザイン「経営をトガらせるデザイン活用術」

おはようございます。中小企業診断士の山口達也です。
横浜も昨日、桜が満開になりました。

昨日で「笑っていいとも」が終わりました。
私が人生で一番見たバラエティ番組だと思います。

32年間、月曜から金曜日まで
毎日笑いを届け続けたことは偉業ですね。
いつも大いに楽しませていただきました。
感謝しております。

さて、今日は日経デザイン3月号の話題です。
特集は「経営をトガらせるデザイン活用術」でした。

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中小企業の事例が特に多い特集で、
興味深く読みました。
いくつかご紹介します。

ハリオの商品開発システムは
「FMS」(ファザー&マザーシステム)と呼んでいる
仕組みで、Fatherである営業とMotherである商品企画者が
協力してSonである製品を世に送り出していくものです。

営業、デザイナーの担当を一人ずつ決め、
両者が責任をもって商品を世に送り出しています。

このシステムは20年間運用しているそうですから、
かなり実践的なノウハウです。

リサーチも社内デザイナーが行い、
デザイナーがパッケージやコピーまで手掛けるそうです。

意見の対立があっても、その克服する策を一緒に考えることが
商品開発の失敗確率を減らすことができるのだと思います。

担当が一人ずつであることも良いと思います。
人数が多すぎるとエッジの効いた商品が作りにくくなりそうです。

「かみの工作所」の福永紙工の
デザイナーの活用システムも初期費用を抑えたい
中小企業にはとても参考になるはずです。

中堅中小はDesignで輝くの記事では、
「営業できる社内デザイナーを育て 下請けから提案型企業へ脱皮」
という題名で、樹脂製品の成形メーカー、本多プラスを
紹介していました。

デザイナーに実際に工場での製造現場に配属し、
その後、営業をさせることで、提案型企業として
業績を伸ばしています。

特集は、経営者がデザインを理解、活用し、
またデザイナーも経営リテラシーを上げることが
成功率を上げるためには必要というまとめでした。

私も同感です。
経営とデザイン、両方を良く学ぶことがやはり重要です。

知識デザイン企業

おはようございます。中小企業診断士の山口達也です。
今日は少し難しい本のご紹介です。

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知識デザイン企業
紺野登 日本経済新聞社

デザイン経営に関する一冊です。

著者は「モノづくり強化論」の落とし穴として、
日本企業の強みとされる品質が優れている点だけでは
勝ち抜くことは難しいと述べています。

そして、理念を掲げ、新たな経験を社会にもたらす、
モノとコトを同時に創造する「アート・カンパニー」が
求められる、とまえがきに記しています。

私は第5章の知識デザインの「方法論」において、
IDEOのデザインに特徴とされる体験的認知によるデザインと、
アップルのデザインに象徴される内省的認知によるデザイン、
の2軸の組み合わせが提示されている点が
面白いと感じています。

その前段にあたるp.164には、
ドナルド・A・ノーマンが提唱した
「体験的認知」と「内省的認知」を紹介し、
知識デザインには両方が必要だとしています。

p.166には次のように記されています。
デザインにおいても、
体験型の、現場に踏み入ってスピーディーに
プロトタイピングを行うことが重要であると同時に、
概念的な本質、本来的な真摯な追求を重ねることも
また極めて重要である。

知識デザインには、革新的な部分を
全体に包含していくような調和総合が求められ、
調和総合には美的判断力が重要であると著者は主張します。

単にイノベーションの重要性を強調しているだけはありません。

理念を掲げ、審美性をもち、
社会・環境とのつながりを考える中で、
真摯であることの重要性を訴えています。

同書は手っ取り早いノウハウ本ではなく、
概念の解説が中心です。

しかし、経営理念を考える時や商品・サービス開発に
参考になるでしょう。

落ち着いた環境でゆっくり読みたいです。

最後に私が面白いと思った箇所をもうひとつご紹介します。

p.70には、ipodの背面をピカピカに磨いた
燕市の東陽理化学研究所を取りあげ、
社長の本合邦彦氏のコメントを引用しています。
(社長が)指紋がつく問題点を伝えたら、デザイナーは不思議そうに答えた。
「汚れたら、ふけばいいじゃないか」
だから、ipodには眼鏡拭きのような布が同封されている。
こういう発想は日本にはない。勉強になった。

常識や従来の延長線上に凝り固まっていませんか?
自戒も込めて。真摯に新たな知を創る努力を続けましょう。

社長のデザイン

こんにちは。中小企業診断士の山口達也です。
seesaaブログのメンテナンスで、投稿が午後になりました。

今日は書籍のご紹介です。

社長のデザイン
日経BP社、日経デザイン編です。

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経営者26人がデザインとの向き合い方を語り、
各企業の事例を紹介した一冊です。

事例の数が豊富です。

製造業、サービス業、小売業、飲食店、農業と業種が幅広く、
大企業だけでなく、中小企業の事例もあります。

デザインをどう決めるか、デザインへの投資の仕方、
デザイナーとの付き合い方、デザイン料の支払い方、
デザインによる経営効果などを実例から学べます。

それぞれの企業が試行錯誤しながら、
自社に最適なスタイルを取っています。

中には失敗談が書かれているところもあります。

経営者の視点で書かれているので、
中小企業経営者の方にとって共感しやすいと思います。

自社にあったデザインの取り入れ方のヒントになる一冊です。

ビジネスマンのための「行動観察」入門

おはようございます。中小企業診断士の山口達也です。
また横浜に台風が接近しています。今年は当たり年ですね。

今日は、デザイン思考で重視されている
フィールドワークについて参考になる書籍のご紹介です。

ビジネスマンのための「行動観察」入門
講談社現代新書、著者は松波晴人さんです。

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行動観察は、被験者がどのような行動をしているかを
じっと観察する調査手法です。

そして、その行動の背景にある意識やニーズをつかむことで、
問題解決や商品・サービスの開発に活かそうとするものです。

人々は勝手の悪い商品・サービスでも
“その商品・サービスはそういうものだ”と思う傾向があり、
不満を不満と感じてないことがあります。

そのような場合、従来のようなアンケートやインタビューでは
不満を抽出することができません。

そのため行動観察は、従来の調査では得られない気づきや
仮説が得られるとして注目を集めつつあります。

松波晴人さんは日本における行動観察の第一人者です。

同書は豊富な実体験・実例をもとに
行動観察がどのようなしているかが記されてます。

ワーキングマザーのニーズや、
イベントでの集客・販売向上のノウハウ収集、
達人の記憶術の秘密にせまるなどの事例が書かれています。

著者の実体験をなぞるように書かれているので、
ストーリー性があって読みやすいです。

私もこの記事を書くために同書を読み返したのですが、
あらためて良書だと思いました。

気づきがとても多いです。
繰り返し読みたいお薦め本です。

コンサルタントとして、現場、現物、現実を
重視する三現主義を大切にしていますが、
行動観察も三現主義と通ずるところがあります。

虚心坦懐にお客様の行動に目を向けると、
新たな改善点が見つかると思います。

第三者の方が先入観なく観察しやすいのは事実ですが、
中小企業経営者の皆様も、行動観察で
自分の会社の現場をあらためて観察すると、
新たな気づきが得られると思います。

ブランド・ポートフォリオ戦略

おはようございます。中小企業診断士の山口達也です。
先週に少し触れた書籍のご紹介です。

「ブランド・ポートフォリオ戦略」
ダイヤモンド社、デービッド・A・アーカーさんです。

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同書は、経営戦略とのつながりを考慮しつつ、
複数のブランドをどうマネジメントするかを考察しています。

ブランド・ポートフォリオ戦略とは、
企業が持つ複数のブランドの構成と
それぞれのブランドの役割を全社的な視点で最適化する
戦略と考えることができます。

インテル、マイクロソフト、ソニーなどの例が出てきます。

他社のブランドとの提携も取り上げられ、
ブランドイメージの相乗効果を追求するモデルなどは
ブランド研究として新しいものでした。

ブランドの役割範囲をどこまでに設定すべきかや、
ブランドの統廃合をどうすべきかなど、
応用的なブランド論が展開されています。

学術書というより帰納的で実務的な内容だと思います。
翻訳も読みやすいです。

大企業の事例ばかりですが、
さまざまな状況からブランドを考えることで、
ブランドの本質が浮き彫りになっていく一冊です。

なお、エピローグ「ブランド・ポートフォリオ戦略20の要点」
から読むと、結論からわかるので
私は理解しやすいと思います。

同書に限らず、アーカー教授の本はボリュームがあるので、
訳者あとがきも含めて、最終のまとめから読むのがお薦めです。

ブランド・リーダーシップ

おはようございます。中小企業診断士の山口達也です。
書籍のご紹介です。

「ブランド・リーダーシップ」
ダイヤモンド社、デービッド・A・アーカーさんと
エーリッヒ ヨアヒムスターラーさんの共著です。

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同書は次のような問題意識から生まれたと捉えています。

ひとつのブランドが、複数の製品や市場を
対象としていることは少なくありません。
複数の国でブランドを展開する場合もあります。

また、複数のブランドを持っている企業も多いでしょう。

その状況で製品や市場、ブランド、国といった単位でそれぞれに、
バラバラに事業活動を行うと、全体として
ブランド・エクイティが損なわれる恐れがあります。

同書は長期的なブランド価値の向上のために、
それぞれの事業活動をどこまで調整・統合すべきか
という観点で書かれています。

全体をまとめるリーダシップが必要ということです。

しかし、ここまでこのように管理すべきだという解が
書いてあるわけではありません。

置かれた状況によって、解は異なりますので、
さまざまな事例や方法論を挙げています。

アーカー教授のブランド3部作の完結編とされる同書は、
中小企業よりも大企業をイメージしたブランド論です。

しかし、中小企業でも応用が効く内容はあります。

例えば、広告以外のブランド構築手法として、
スポンサー活動やwebについても述べた章は
参考になると思います。

私が考える3部作の前2作の特徴を簡単にまとめます。
3部作のどれから読もうかと迷われた方は参考にしてください。

ブランド・エクイティ戦略
ブランドが企業に価値をもたらすことを解説している。
ブランドエクイティを説明している。
どのようにブランドイメージを創るか。
名前やシンボルマークとブランドとの関わりを述べている。

ブランド優位の戦略
ブランド・イメージはすでに顧客に持たれているものだが、
ブランド・アイデンティティは、そのブランドがどうありたいか
という長期的な信念であり、その点を解説している。
情緒的便益や自己表現的便益ついて解説している。
企業組織とブランドの関係について解説している。

なお、複数のブランド間の関係をどうするかは、
「ブランド・リーダーシップ」にも記述がありますが、
その後に出版された「ブランド・ポートフォリオ戦略」の方が
記述は充実していると思います。

佐藤可士和の超整理術

おはようございます。中小企業診断士の山口達也です。
今日は書籍のご紹介です。

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「佐藤可士和の超整理術」
日本経済新聞出版社、著者は佐藤可士和さんです。

いわゆる「片づけ本ブーム」が来る前の2007年に出版されました。
現在は文庫にもなっています。

整理術を空間、情報、思考の3段階で説いています。

最初に登場する空間の整理術は、片づけの話です。

しかし、片づけ本ブームの前に書かれており、
デザイナーが書くテーマとしても異色でした。

情報の整理術や思考の整理術は、
著者のアートディレクターとしての事例をもとに解説しています。

アートディレクターの仕事の一端を垣間見れます。

同書を読むと気付くと思いますが、
佐藤可士和さんのデザインはかなり論理的です。

なんとなくやセンスでデザインをしません。

経営者の思考回路に近く、納得を得やすいデザインです。

中小企業ではデザイナーに依頼できる資金が少なく、
自らデザインをすることも多いと思います。

デザインの進め方として参考になるところも多いはずです。

同書では「課題の設定」という表現で、
本質を見つけて磨いて光らせる
本質がネガティブな場合は発想を転換して反転させる
などの考え方を示しています。

私も戦略コンサルティングで同じ考え方をとっています。
共感できました。

心を動かす音の心理学

おはようございます。中小企業診断士の山口達也です。
今日は書籍のご紹介です。

「心を動かす音の心理学 -行動を支配する音楽の力-」
ヤマハミュージックメディア、著者は齋藤寛さんです。
http://www.otokan.com/

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音楽はブランドやデザインに関するコンサルティングでも、
その影響は大きく、とても関心を持っているテーマです。

音は無意識に人の心理や行動を左右するもので、
かなり強力な要素です。

ビジネスとの関わりも含めて書いた本を読みたいと
ずっと思っていたところ、同書と出会いました。

ビジネスに直接関係する章は4割程度ですが、
他の章も読み物として興味深く楽しめます。

音楽に詳しくない私も読めました。

音楽によって、働く人の生産性向上やストレス軽減、
適した空間の構築や、望ましいお客様を選ぶ効果
などが期待できます。

店舗では音楽が
お客様の滞在時間にも影響を与えると言われています。

今後さまざまな研究が進んでいくと思われます。

企業や空間によって状況は違うので、この一冊だけで、
自分たちには具体的にどの曲が適していると
すぐにわかるわけではありません。

しかし、音楽とビジネスについて
基本的な考え方を学ぶのに適した良書です。

売れるデザインの新鉄則30

おはようございます。中小企業診断士の山口達也です。
今日は書籍のご紹介です。

「売れるデザインの新鉄則30」
日経BP社、日経デザイン編
http://ec.nikkeibp.co.jp/item/books/192920.html

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パッケージデザインに消費者調査を基に、売れるデザインは
どのようなものか、法則として抽出したものです。

20~34歳を「若年」
35~49歳を「中年」
50歳以上を「シニア」

と分類し、さらに男女を分けて法則を導いています。

関東と関西の違いや、ネーミング、音感について
書かれたページもあります。

題材として取り上げられているのは、食品のパッケージが
多いのですが、他のデザインに十分応用できる内容です。

載っているデザインはそのまま真似できませんが、
法則なら活かせます。

中小企業では消費者調査にお金をかけられないので、
どのようなデザインにしようか考えるときに
新鉄則を元に仮説を立ててデザインができます。

全編カラーでないのが残念ですが、価格の関係で仕方ないです。

マーケティングリサーチの通りにビジネスをやっても
うまくいくとは限りませんから、
あくまで参考データとするのがよいです。

しかし、リサーチに資金をかけられない中小企業は、
デザインを感覚だけでなく、データを参考にする合理性も
考慮した方が成功確率は上がります。

鉄則21:シニア男性は「情」で、女性は「理」で攻めよ
は私も意外でした。思っていたものとは違う結論でした。

中小企業経営者の方も、自身が思うものと違う
セオリーが鉄則にあるかもしれません。

デザインの参考になる一冊です。

小が大を超えるマーケティングの法則

おはようございます。中小企業診断士の山口達也です。
ロンドンオリンピックが終わって仕事モードです。
先週に続いて書籍の紹介です。

「小が大を超えるマーケティングの法則」
日本経済新聞出版社、著者は岩崎邦彦さんです。

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先週ご紹介した「スモールビジネス・マーケティング」の
著者である岩崎邦彦さんの最新刊です。

「スモールビジネス・マーケティング」の主張から
大きく変わっているということはありません。

今回も消費者調査や実証データに基づいた本の展開です。

こだわりや個性、専門性が大切であるとの主張は変わらず、
核となる商品「シンボル」がある企業ほど好業績であることや、
消費者は利用する前に、店舗の外観、看板、従業員の外見、
パッケージで品質を判断してしまう傾向を指摘しています。

新たに追加されている論点として、
小さな店で買物をしたい人々は地元志向が強いことや、
低価格志向ではないことを挙げています。

「値引きするならおまけをつけろ」とも言っています。

そして「顧客とのきずな」と「地域とのきずな」を
強化することが望ましいとしています。

きずなの強化では、
顧客や地元住民にモニターになってもらうことや、
顧客と協働した商品開発、地元産の素材を使った商品開発、
イベントや交流の場、顧客紹介によるプロモーション、
などの具体策をたくさん挙げています。

また、店員の提案力が企業の業況に影響しているとし、
コミュニケーションの重要性も引き続き訴えています。

こちらから一方的に伝えるだけでなく、
対面やアンケート、ウェブサイトで
顧客の声を吸い上げることも大切だとしています。

顧客への共感力では、接客を女性中心に行っている企業は
業況が良い調査結果も紹介しているのは面白いですね。

ターゲットや商品を絞り込むことは勇気がいりますが、
絞り込んだ企業の方が業況が良いという
全国の中小企業700社の調査結果は経営者の背中を押すでしょう。

経営者へのメッセージが詰まっており、
「スモールビジネス・マーケティング」よりも
さらに読みやすい一冊です。

スモールビジネス・マーケティング

おはようございます。中小企業診断士の山口達也です。
今日は書籍の紹介です。

「スモールビジネス・マーケティング」
中央経済社、著者は岩崎邦彦さんです。

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岩崎邦彦さんは静岡県立大学の教授で、
中小企業診断士試験の試験委員でもあります。

この本は調査結果を元に、
小さな小売店のマーケティングのあり方を示しており、
学術書でもあり、実践的でもある良書です。

その主張について、私は次のような理解をしています。

消費者ニーズは多様化・分散化している。

大規模小売業が対応しやすい大量生産、大量消費のスタイルに
合わない(=ボリュームゾーンではない)消費者が存在し、
小規模小売業がそれらのニーズをすくい取れるチャンスが
広がっている。

大きな店でなく小さな店で買物をしたい人々には、
本格(こだわり、個性、専門性)志向、
人的コミュニケーション(店員のアドバイス、
店員とのコミュニケーション)志向、
関係性(気に入った店は長く利用したい)志向がある。

したがって、小規模小売店は次のようなことをすべきである。

・コア商品を中心としたアイテム数の充実(品揃えの深さで勝負)
・小売にサービス、情報、学び、体験の要素を加える
・顧客との双方向のコミュニケーションを大切にする
・くちコミの影響力を認識し、くちコミとうまく付き合う
・販売員満足や顧客維持活動の重要性

あくまで私の理解ですので、
著者の主張と異なる部分もあると思います。ご注意ください。

これらの考え方は小売店だけでなく、
中小企業全般にあてはまると私は思います。

2004年の出版ですが、特にコミュニケーションや体験、
くちコミの重要性はさらに強まっていると感じます。

中小企業経営者にお勧めできる一冊です。

ブランド優位の戦略

おはようございます。中小企業診断士の山口達也です。
今日は書籍の紹介です。

「ブランド優位の戦略」
ダイヤモンド社、著者はデービッド・A. アーカー教授です。

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第1章では前著「ブランド・エクイティ戦略」の内容を概観し、
新しい研究を加えています。

そのうえで本書は、ブランド・アイデンティティ(BI)
という概念を提示しています。

前著が、ブランドとは何か、ブランドが有用なのはなぜか、
を解説したのと比べ、本書はブランド構築のポイントに
重点が置かれているでしょう。

ブランド・アイデンティティとは、簡単に言うと、
ブランドが何を表しているかを示し、
組織が顧客に与える約束を意味します。

ブランド・イメージと異なり、ブランドをどう思われたいか
というブランド戦略策定者の意思を含んでいます。

ブランディングで、製品属性や機能的便益だけにとらわれると、
強いブランドができにくくなることを指摘しています。

ブランディングを進めるにあたって、情緒的便益や
自己表現的便益、ブランド・パーソナリティといった
人間的、感情的側面にも目を向ける重要性を説いています。

ブランド・パーソナリティは、
ブランドから連想される人間的特性の集合です。

例えばブランドに、若くて男性的なイメージや、
寄り添うようなやさしいイメージがついているということです。

ブランド・パーソナリティによって、ブランドの購入者は、
なりたい(そのように見られたい)自分になれたり、
消費によって得られる感情がより豊かになったりするわけです。

よいブランド・パーソナリティが形成されると、
真似されにくく持続的な競争優位が生まれます。

優良なロイヤルティの高い顧客を持つことができます。

価格が高めの専門書ですが、消費財を扱っていて、
機能面での差別化が難しくて価格競争に陥っていると
お考えの企業は手に取ってほしい一冊です。

経営戦略のヒントになると思います。

また、後半ではブランドの長期戦略や、
ブランド構築のための組織づくりにも言及しています。

ブランド・エクイティ戦略

おはようございます。中小企業診断士の山口達也です。
今日は書籍の紹介をします。

「ブランド・エクイティ戦略
競争優位をつくりだす名前、シンボル、スローガン」
ダイヤモンド社、著者はデービッド・A. アーカー教授です。

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1991年に書かれた本書をきっかけに、経営において
ブランドが着目されるようになったと言ってよいでしょう。

日本のデザイン業界でも、バブル期に流行したCIから、
ブランドの時代に変わったと言われるほどです。

ブランドがCIに変わるものという考え方には賛成しませんが、
90年代以降、ブランドの重要性が認識され、
研究が進んだことは間違いありません。

「ブランド・エクイティとは、ブランド、その名前やシンボルと
結びついたブランドの資産と負債の集合である。」
本書では説いています。

ブランド・エクイティとは簡単にいえばブランド価値のことです。

このブランド・エクイティは次の5つの要素から形成されると
主張しています。

ブランド・ロイヤルティ、認知、知覚品質、ブランド連想、
その他の特許や商標、チャネルなどの資産、です。

ブランド・エクイティを増やすために、先ほど挙げた要素を
どのように捉え、どう行動すべきかを豊富な企業事例を元に
まとめています。

ブランドネームやブランド拡張、グローバルブランドまで、
書かれているテーマの幅は広いです。

当時ここまでまとめられた本はなかったと思いますし、
現在のブランド理論との違いが大きくないことを考えると、
その完成度の高さは素晴らしいです。

日本語訳がやや読みにくいのが残念ですが、
ブランド理論をしっかり学びたい方には
チャレンジする価値のある一冊です。

観光アート

おはようございます。中小企業診断士の山口達也です。

今日は書籍「観光アート」をご紹介します。
光文社新書、著者は山口裕美さんです。

観光アート.jpg

現代アートを目的に出かける旅行や
現代アートをまちおこしのきっかけとしている事例に
ついて書かれた本です。

著者のアートへの思い入れが感じられる内容ですが、
アート評論が主ではなく、アートによる地域活性化の
あり方が中心になっています。

香川県直島や、青森県の青森市と十和田市、
石川県金沢市が現在のように盛り上がるまでの経過が
わかります。

また、越後妻有アートトリエンナーレや
横浜アートトリエンナーレなどのプロジェクトについても
紹介されています。

著者の率直な意見も、芸術や地域、日本への愛から
来るもので、関係者には耳が痛いところもあるでしょうが、
傾聴に値するものです。

美術館、博物館の数は、かなり増えているようですが、
一方で財政面では苦しい運営をしているところも多いと
聞いています。

この分野では、自治体や公益法人などの運営が多いのですが、
携わる人の情熱と明確なコンセプト、戦略が
求められることを教えてくれます。

つまり、公平性よりも取捨選択がポイントになります。

本の後半には、日本全国「一度は訪ねてみたい美術館100」
のガイドも付いており、アート好きが喜ぶ内容です。

文化や創造性が、人や街、文明にとっては重要で、
生活が豊かになればなるほど、その重要性は増すでしょう。

美術の多様性や裾野の拡大によって、美術館が特定の
地域だけでなく、日本中の地域経済を活性化させる
可能性を感じました。

アートファンのみならず、地域活性化、地域資源の発掘に
関わる方にもお勧めします。

また、香川県直島の情報も多いので、
私は直島に行く道中にも読み直して、直島旅行を楽しみました。
直島に行く方にもお勧めです。

人が集まる!行列ができる!講座、イベントの作り方

おはようございます。中小企業診断士の山口達也です。

今日は書籍をご紹介します。
「人が集まる!行列ができる!講座、イベントの作り方」
講談社プラスアルファ新書、著者は牟田静香さんです。

講座、イベントの作り方.jpg

セミナー集客のノウハウが詰まった実務的な一冊です。

タイトルの付け方、チラシの作り方、
デザインの基本的な考え方が記されています。

デザイナーではなく一般の人が作るチラシを前提に話を進め、
かっこいいデザインにしたら人が来る、というわけではない
と説きます。

デザインの方向性やコツもちゃんと書いてあります。

実際に行われた同じテーマのセミナーチラシを二つ並べて、
その結果となる集客数が書いてあるなど、
結果が一緒に記されている点は類書にない特長です。

新書でコンパクトですし、軽快な文章で読みやすい本ですが、
デザイン入門者には充実しすぎるほどの内容です。

デザイン添削の改善例もあります。

そしてマーケティングにおいて重要な
対象者(ターゲット)への活動が書かれています。

著者は丁寧にターゲットの意見を収集し、
それを実際に反映させています。

これだけ丁寧にやるのは楽ではありませんが、
その分結果が出ています。

私は独立前に神奈川中小企業センター
(現名称は神奈川産業振興センター)に勤めていました。

セミナーを著者と同様に企画する側でしたが、
大いに学ばせていただきました。

独立後の今も折に触れて読み返す一冊です。良書です。

ビジネスの改革者10人のデザイン活用術

こんにちは。中小企業診断士の山口達也です。

今日は2011年1月号の雑誌日経デザインのご紹介です。
特集は「ビジネスの改革者10人のデザイン活用術」でした。

ビジネスの改革者.jpg

卓抜の内容です。

経営にデザインを取り入れた農業や製造業の事例があります。
中小企業の事例ばかりです。

なかなか公表しにくい企業の売上高やデザイン投資額、
ロイヤリティーもすべての企業ではありませんが掲載されています。

丹念に取材したことがうかがえます。

サービス業の事例もあったら、もっと嬉しかったです。

特集内にもまさに「デザイン経営」の文字があります。

デザインへの経営者の判断にせまる記事は、
中小企業経営者にとって参考なること間違いありません。

同誌は定期購読誌で書店で1冊だけ買うことはできません。

2月号も発刊され、最新号でもなくなってしまいましたが、
まだの方は大きな図書館等でぜひご覧ください。

経営者が語るデザイン経営のあり方

おはようございます。中小企業診断士の山口達也です。

今日は雑誌「日経デザイン」のご紹介です。8月号特集は
「経営者14人が語るデザインと経営、投資の本音」です。

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たいへん興味深く読みました。

登場する経営者は全員、デザインを重視した経営を
行っていますが、その考え方はさまざまです。

自社に合ったデザイナーとの付き合い方、
デザイン投資のあり方を探っていった結果でしょう。

画一的な答えはありません。

私もそれぞれの企業における最適解を求めて、
経営コンサルティングを行っています。

企業の成長ステージや、デザイナーと関わった経験は
企業によって異なりますから、出す答えも異なるのです。

8月号には大手企業も中小企業も、メーカーも小売店も
飲食・サービス業も掲載されていますので、経営者は
自社に合ったデザイン経営のヒントがつかめるはずです。

「マーケットインではなく、プロダクトアウトをやっている」
と話す経営者が登場します。面白いですよ。

経営コンサルタントとしては、こうした記事が本当は
ビジネス全般を扱う雑誌にたくさん載ってほしいと思います。

中小企業経営者の声を紹介できるよう、私もがんばります!

奈良の小さな会社が表参道ヒルズに店を出すまでの道のり。

おはようございます。中小企業診断士の山口達也です。
西日本での豪雨が気になりますね。
横浜も突然、強い雨が降ります。注意しなくていけません。

今日は久しぶりに本をご紹介します。

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奈良の小さな会社が表参道ヒルズに店を出すまでの道のり。
中川 淳
日経BP社

昨年10月に出版されて、すぐに私も読みました。
ご紹介が遅くなりましたが、
中小企業経営者にはぜひ読んでいただきたい一冊です。

著者は、高級麻織物を扱う300年の伝統を持つ老舗
株式会社中川政七商店の代表取締役です。

中小メーカーのブランディングには小売をやることが
最も現実的で有効である、と結論付けています。

社員約100名のメーカーの経営者が、小売店を始め、
運営するまでの考え方や事業展開を語っています。

中小企業経営者にとって等身大の内容です。

「中小企業には中小企業なりの『やるべきこと』
と『やるべき手順』がある」
という主張は私と同じです。

多くのビジネス書同様、ブランドやデザインに関する書籍も
大企業を対象としたものが多く、中小企業の現場では、
本に書いてある通りのブランディングやデザイン活用は
そのまま使えないことがほとんどです。

前提となる状況が異なるので当たり前なのですが、
その点をしっかり主張し、その手順まで
詳細に書いた本は意外と少ないです。

著者がブランディングに取り組んだ理由として、
「私がデザイナーではないから」という理由を
挙げていたのも面白かったです。

著者は、ブランドには差別化が必要と説いた上で、
後半の対談編で、以下のように語っています。

「経営者から見れば、調査や分析を基に理論を積み上げて
答えを出すことはそう難しくない。しかし、積み上げで
得られる答えは『違い』を生まないんです。
理論を積み上げたうえで、その理論から“飛ぶ”ことが
大切なのです。“飛ぶ”ことが『違い』を生みます。」

著者は“飛ぶ”ことはデザインに近いとも語っています。

この本から「経営そのものもデザイン」
と考える著者の感覚をぜひ感じ取ってください。

このブランドに、いくらまで払うのか

おはようございます。中小企業診断士の山口達也です。
今日は本の紹介です。

このブランドに、いくらまで払うのか
白井 美由里
日本経済新聞社

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この本はブランドに対する
消費者の価値の認める度合いを分析しています。

主に次の4つの商品群で研究が行われています。

自動車
ファッション商品
テレビ
香水

また、プレミアムブランド(高級ブランド)として、
メルセデスベンツ、トヨタクラウンなどが登場し、

ノンプレミアムブランドとして、
ユニクロ、GAPなどが題材に挙げられています。

欧米のブランド本より題材が親しみやすいです。

この本では、消費者が買うことによって得られる
便益(ベネフィット)を次の5つにまとめて分析しています。

品質保証
自己表現
自己満足
社会的満足
差別化

この5つのベネフィットとも、
高いお金を出してでも得たい価値(便益)であることが、
実験結果を示して説明されています。

そして、私が注目したのは、
5つのベネフィットの相対関係として、消費者が
お金をを支払う価値があるとして最も回答している
ベネフィットは「品質保証」
だったということです。

これは、自動車、ファッション商品、テレビ、香水の
4つの商品群とも、すべて同じ結果でした。

ファッション商品で挙げられている、いわゆる海外の
ブランド品のバッグも含めて、一番支払う価値があると
認められているのは「品質保証」なのです。

2006年11月に出版されましたが、耐震偽装や
食品の安全の問題が話題に上る今は、品質保証が
もっと重要視されているになっていると私は考えます。

したがって、ブランド構築には、まずこの本で示されている
「品質保証」の以下の構成要素を大事にすることが王道です。

品質・性能がよい
頑丈である、壊れない
有名である
多くの人が持っているので安心、信頼できる

日本の中小企業は品質・性能がよい、頑丈である、壊れない
という分野は得意ですよね。
良いものづくり、サービスづくりから、スタートです。

そして、その商品の良さをうまく伝えればよいのです。

しかし、良い商品づくりなら自信があるが、
営業や販売促進は苦手という方も多いと思います。

そういう方は、コミュニケーション戦略は専門家を活用して、
自身はよりよい商品づくりに注力する方が
ブランド構築の近道になるでしょう。

この本は研究論文のような形で書かれています。
その分、少しとっつきにくいですが、
実験データにはやはり説得力があります。